第2話 えいゆうのつばさ

 みらーいのみらい。


 あるむらに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。

 おじいさんは かがくしゃ で、まいにちへやのなかでけんきゅうをしています。

 おばあさんは おじいさんに からだにいい しょくじを かんがえています。


 あるひ、おじいさんが へやからで てきて いいました。

「おばあさん、すごくいいものができたぞ!」

「あらあらおじいさん、どうしたのですか?」

「つばさじゃ! せなかにせおってボタンをおすと、そらをとべる

 『こだいえいゆうのつばさ』というものができたのじゃ!」

「あらあら、まあまあ、きょうはおいわいですね」

「ばあさん、こんやはからあげがたべたいぞ。

 ようし、むらのみんなにみせてこよう」


 それをみていた うさぎの ピョコ太 はいいました。

「じいさん、それでほんとうに そらを とべるのか?」

「とべるとも! よし、じゃあ いま つかってみせるぞ!」

 おじいさんはせなかにつばさをせおい、ベルトでからだに みっちゃく

 させました。


「このボタンをおすと つばさが うごくのじゃ!」

 ボタンをおすと、つばさが はばたきだし、ふわーりとおじいさんのからだは

 じめんから うかびあがりました。

 そして、どんどん、どんどんと そらを のぼっていきます。

「どうじゃ~! すごいじゃろう。お前のジャンプでもとどかないじゃろー」

 ピョコ太はそのことばにムッとして、おもいきりジャンプをしました。

 が、ざんねんながら、つばさでとんでいるおじいさんにはとどきませんでした。


 くやしがるとどうじに、うさぎのピョコ太はいいました。

「じいさん、そのつばさ、おれにくれ。そらをとびたいんだ」

 と、そのときでした。 のっそりと、かめの かめきちが やってきました。

「じいさん、それはいいものだな。おれもほしいな」


 それをきいたピョコ太はおこりました。

「さきにほしいといったのはおれだ!」

「じいさんはまだ、おまえにやるとはいってないだろう?」

 ピョコ太とかめきちはけんかをはじめてしまいました。


 おじいさんはこまってしまいました。


 それをみていたおばあさんがきていいました。

「ピョコ太とかめきちで、きょうそうして かったほうに あげたらどうじゃろか?」

 それをきいたピョコ太はニヤリとしていいました。

「そうしよう、おれのかちはきまったな」

 かめききちは かちほこっている ピョコ太を みていいました。

「かんたんにかったとおもうなよ」


 ピョコ太とかめきちの つばさをかけた きょうそうが はじまろうとしています。

 おじいさんはいいました。

「このわしのいえのまえから、むこうにみえるおかのうえのいっぽんすぎを

 さわって、そしてここに、もういちどもどってくるのじゃ。

 さきにもどってきたほうに、このつばさをくれてやろう」


 さて、ピョコ太とかめきちのきょうそうがはじまります!


「よーい...スタート!」

 おじいさんはきょうそうスタートのピストルをパーンとならせました。


 ピョコ太は じまんの あしで や のように すすんでいきます。

 かめきちはまだスタートすらしていません。

 かめきちは「じいさん、このきょうそうにルールはないんだよな。

      はやくいってもどればいいんだよな?」

 おじいさんはびっくりしてかめきちの かお をみるのでした。


 ピョコ太は ものすごいスピードをだしていて、このはやしをぬけると、

 おかのうえの いっぽんすぎ がみえてくるのです。

 ピョコ太は はやしの でぐちまえで きゅうブレーキ をかけました。

「きにいらない かめきちめ。わなをしかけて さらに おくらせてやろう」

 どうやらピョコ太は いじのわるいこと をおもいついたようです。


 ピョコ太は はやしの でぐちまえの みちのまんなかにおとしあなを

 つくりはじめたのでした。

 よこでひろったぼうでピョコ太はひっしにあなをほります。


 ピョコ太は かめきちが あなにおちるすがた をおもいうかべると

 おかしくてたまりません。


「よし、さいごのひとほり───」

 ピョコ太が さいごのひとほりと ぼうであなのおくを ついた そのしゅんかん──

 なんとおとしあなが だいばくはつ したのでした!

 ばくはつの ほのおと かぜによって ピョコ太はおおやけどをおって

 そらにとばされました。


 ピョコ太はおもいました。

「ああ、なんてことだ。これはむかし せんそうしてたときの じらいじゃないか。

 いじわるなことをしないで ふつうに はしってれば かてたのに。

 おれってバカだなあ」

 じめんに たたきつけられて しんでしまうんだろうなとおもった、

 そのときでした。


 ピョコ太はじめんにたたきつけられることはありませんでした。


 なんと、かめきちが そら を とんできたのでした。

 せなかにはおじいさんがつくった『えいゆうのつばさ』をせおって、

 ものすごいスピードでとんできたのです。


 とくべつにルールをきめてないということで、

 かめきちは『えいゆうのつばさ』をつかわせてもらって、

 あしのおそさを ばんかいして きたのでした!


 めのまえの はやしのでぐちあたりが とつぜんばくはつし、どうじにピョコ太が

 とんできたので かめきちは すごくおどろきました。 

 おおけがをしているピョコ太をみると、かめきちはこうらにつけている

 つばさとつばさのあいだでうけとめると、きょうそうはそっちのけで、

 おおいそぎで おじいさんのいえに もどるのでした。




 ピョコ太はおおやけどをおいましたが、いのちはとりとめました。

 そしてこんかいのいじわるを ふかくはんせいをし、

 つばさは かめきちに ゆずることにしました。


 かめきちはピョコ太にとって いのちのおんじん になったからです。


 そして、いのちのおんじんとなった かめきちと、

 つばさをゆずったピョコ太は、とてもなかのいい しんゆう になりましたとさ。




 おしまい

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日本ちょっとおかしな未来ばなし 葵 詩安(E) @shiann-ez

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