段ボール箱で運ばれてきたメスガキが核分裂を起こすらしい
四志・零御・フォーファウンド
段ボール箱からこんにちは
ネットショッピングで買った商品がいつ届くかなんて覚えられるはずがない。日用品のほぼ全てをインターネットでポチる生活をしている俺には不可能だ。
ここ数年、在宅勤務となってからは2日に1度は荷物が届く。そのお陰で「こんなの買った記憶ないぞ?」ってのが日常茶飯事。さらに大半の荷物は段ボール箱に眠ったままだ。
そんなわけで、ピンポーン♪とインターホンが鳴った。
仕事部屋から出てリビングのモニターを確認する。
カメラ越しには、いつも来る爽やか細マッチョイケメンの配達員が大きな段ボールを持って玄関前で待っていた。雨が降ろうと雷が鳴ろうと雪が降ろうと、その爽やかさが衰えることはない。外見だけでなく中身もイケメンとは恐れ入る。
「はーい」
『ども、ミケネコナデシコです~。お荷物をお届けに参りました~』
「どもー」
玄関の扉を開けると、足元には荷台と大きい段ボール箱が置いてある。いつもなら両手で抱える程度の荷物だ。こんなに大きいのならさすがに記憶があるものだとお思うのだが。
「まいどです!お名前に間違いがないか確認の上、サインお願いしま~す」
宛先は俺の名前になっていたが、送り主は親父だった。そりゃあ記憶にないわけだ。納得した上でサインをする。
「おっけーです」
「はい、ありがとうございま~す。大変重たいのでお気を付けて」
受け取ると腕が抜けるんじゃないかと思ったほどに重かった。というか、ほぼ引きこもり生活の俺には無理がある。
配達員は、サインを書いた紙切れを持って家の前に止めてあった配達車に戻った。
「なんだよこりゃ」
普段運動をしてない引きこもりが運ぶには辛い作業だ。仕方がないので地面に置いて引きずるようにリビングまで移動させた。
机の引き出しにあるカッターを引っ張り出してきてテープに切れ込みを入れようとしたその時だった。
——ガタガタ!ガタガタ!
「うっわ!!!」
段ボ―ルが一人でに大きく動き出したのだ。驚きのあまり、尻もちをついてしまう。
「……げ、幻覚じゃないよな?」
そーっと手を伸ばす。すると今度は段ボール箱が小刻みに震え出した。恐ろしさのあまり、四つん這いでその場から離れる。
「なっ、何が入ってるんだよ!」
リビングの扉を少し開けて覗き込むように段ボール箱を観察していると、ようやく動きが止まった。
生き物が入っているのか? 親父は一体何を送り付けて来たというのか。
身の安全を確保するために手身近な武器——玄関にあった傘を手に持った。
ゆっくり、物音を立てないように、リビングの中心に置かれた段ボール箱に近づいていく。
静かに腕を伸ばす。傘が段ボール箱に触れたが、今度は反応がない。
その間に、もっと近づいてカッターナイフでテープに切り込みを入れた。
箱の中身は何なのか。正体を確かめてやろうではないか。緊張と不安が脳内で渦を巻き、額から出た冷や汗が一筋頬を流れる。
震えた手で箱を開いたその瞬間、黒い影が勢いよく飛び出した。
「うっわわあああああっ!!!」
思わず悲鳴をあげて床へと仰け反ってしまう。後ろへ下がろうにも手が滑って上手く動かない。傍から見れば死にかけのセミを彷彿とさせるはずだ。バタバタと手足を動かして、さぞ滑稽なことだろう。
「…………何やってるんですかぁ?」
そう言って、酷い光景を目の当たりにした感想を述べる、猫なで声のした人間がこの場にいただろうか。
顔を上げると、藍色の大きな瞳がこちらを見つめていた。
「え?」
身体が硬直した。人間というのは状況が呑み込めないと微動だに出来ない生き物らしい。
リビングの中心にいたのは、見た目が小学生3年生ぐらいの赤いランドセルを背負った幼い女の子だった。
「き、キミは?」
「アタシの名前は自立式次世代原子炉試作号機【
じせだい……げんしろ?そんな名前の親戚がいただろうか。というか、宅配で運ばれてくる親戚がいてたまるか。
「俺に何のようだ?」
「そのまえに、お客さんなんだからお茶ぐらい用意したらどうなんですかぁ?」
「わ、わかったよ」
随分と生意気な口を聞く小さなお客さんだ。
「そうだ、アタシ、あと数時間で核爆発を起こすんだぁ♡」
「は?」
は?としか返せない。核爆発など物騒な言葉を小学生が使わないで欲しい。頼むぜ義務教育。
「だぁ♡・かぁ♡・らぁ♡」
彼女が迫る。
「アタシの
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