幕間 ユリとエデンと謎のダンジョン②
ユリとエデンはいろんな魔法を駆使しつつ、ダンジョンのボス、青龍の元へ辿り着いた。
青龍が『氷』の魔法を放つ。ユリはそれを『防壁』の魔法で受け止めた。
「やった!うまく受けれました!でも、なんとか倒さないと。うーん、攻撃魔法は加減ができないし使いたくないですね。」
「そうだね。」
ユリは魔法使いの記憶から攻撃をせずに相手を倒す方法を探す。
「見つけました!」
ユリの足元より青い魔法陣が広がる。
『魔力吸収』
この魔法はじわじわと相手の魔力を吸い取っていく魔法である。
「...青龍の魔力を吸い上げるまで僕が注意を引くよ。力がなくても振れるような剣を召喚できる?」
「えっと...はい、やってみます。」
ユリは白く光る剣を一本召喚した。
「......。」
エデンがその剣を無言で握る。
「その光の剣なら重さはほとんどないので雑魚でも触れるはずです。」
「うん...そうだね。」
エデンが青龍に光の剣を叩きつけ注意をひいてくれる。その間にユリは魔力の吸収を続けた。
しばらくすると、青龍が自ずと身を退き戦闘終了となった。
ダンジョンの奥の部屋にはクリア報酬である宝箱があった。
「もうクリアしちゃいましたね...。魔法使えて本当に楽しかったな...。」
「また一緒に来よう。僕もとても楽しかったよ。」
宝箱の中身は黒くとんがる魔法使いの帽子だった。それを見てはっとする。
「エデンさん。つかぬことをお聞きしますが...。」
「ん?」
「このダンジョンってエデンさんのものだったりします?」
「そうだよ。といっても、攻略したダンジョンを私物にしてるだけだけどね。」
「わぁすごい!さすが勇者で魔王ですね!...あれ?」
ユリははたと疑問に思う。攻略済みなら何故エデンと自分がここに来たのだろう。
「ここはね、アルマのお墓なんだ。」
「え...。」
「普段は封印してるから誰も入ることはできない。アルマの魂はユリちゃんにあるから寂しい思いはしてないと思うんだけど、たまにこうして来て彼女のことを思い出すんだ。」
エデンは魔法使いの帽子を愛しむように撫でる。
「それじゃあ、能力の交換の特性のダンジョンを選んだのは何故ですか...?」
「試してみたかったんだ。君にあるアルマの魂が一時的にでも僕の方に来てくれないかなって。でも、それは能力とは関係ないみたいだね。」
「そうですか...だから私と二人でここに来たかったんですね...。」
エデンを想い胸が締め付けられる。エデンにとって彼女がとても大切な存在であることがひしひしと伝わる。一方で彼女を魔王に殺させてしまったことを未だに責めているようにも感じた。
「でも、わかったことがある。ユリちゃんはこのダンジョンだと僕の魔法の才能とアルマの記憶を器用に組み合わせて、最強の魔法使いを実現できるみたいだね。」
「え、そうなんですか?」
「アルマにしか使えない魔法を君は使っていた。魔力吸収や白い光の剣は、研究熱心な彼女だけのオリジナルの魔法なんだよ。」
ユリは気づかない内にアルマだけの魔法を使うことができていたようだ。
「エデンさんは、私がアルマさんの魔法を使ってるのを見てどう思ってたんですか?」
「...嬉しかったよ。アルマの魔法が見れて、本当に嬉しかった。」
エデンは爽やかな笑顔を見せてくれる。ユリにはそれが明るく装っているように見えて仕方がなかった。
エデンにこの場だけでも心の奥に押し込めていることを素直に話してほしい。そう思った。
「あの、よければ私にエデンさんとアルマさんの物語を聞かせてくれませんか?」
「え?」
「私にはアルマさんとエデンさんの二人の思い出はないんです。アルマさん、恥ずかしがって教えてくれないんですかね...。エデンさんから是非聞きたいです。」
「そんなに楽しい話じゃないよ?」
「はい、構いません!」
「...。」
その時、エデンの顔が憂いを帯びた影のある表情へと変わる。それは爽やかな勇者の仮面をとった、エデンの本来の姿のようだった。
「ありがとう。僕はきっと、僕とアルマの物語をずっと誰かに聞いてほしかったんだと思う。君が聞いてくれるなら、すごく嬉しい。」
ユリはゆっくり話を聞こうとエデンの隣に座った。
「今から二年くらい前のことだったかな。最初はね、魔王ディーンの暇つぶしから始まったんだ。」
⭐︎2章 エデン編へ移行します。
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