+1h≠n≠A 〜たった1時間増えただけの世界は、新たな世界ではなく、全く別の世界だった〜
@biggulf
プロローグ 1
敵の敵は味方。
こんな言葉がある、実際どうだろう?本当にそうだろうか?
共通の敵がいるから手を組めそうなのは理解出来る、でも味方かどうかは怪しいものだ。逆を言えば敵の中にだって、味方になる可能性のあるモノはいる。
もっと言えば、味方の中に敵がいるかもしれない。
結局のところ、線引きは非常に難しい。
何が言いたいか?
少し昔の時代、人類には信じていた事があった。
それは人類にとっての共通の敵が現れたら、世界は平和になると。
分かりやすくいうなら、宇宙人が地球に攻めて来たら、みんなで力を合わせて戦うだろうということ。
更には、それにより人類は団結しあい互いの争いは一切無くなるとも。
少なからず、当時の人類のそこそこ多数が、そう思っていたらしい。
だけど現実はそんなに甘くない。
2020年代に入り、人類は長く続く疫病との戦いが始まった。
これはいわば、人類共通の敵であり、倒すべき敵。
誰もがほぼ平等に、命の危機を感じ、恐れる存在。
つまり宇宙人と同じ。
始めこそ世界各国での連携もあったが、結局最終的には罪のなすり付けあい、ワクチンの争奪戦、協力関係なんてものはあまりに脆く、儚い。
子供心には、みんなで助け合えばどうにかなるんじゃ、なんて思ったがそれは無理だった。
長い人類の歴史の中で、共通の敵が現れようが、同じ苦しみがあろうが、争いがなかった事は一度たりともない。
これが現実。
それでも、長く続く戦いにも、区切りはつく。
2026年、疫病の流行・蔓延により世の中の医療進歩は目覚しく進み、疫病への抗体が出来上がった。それに連なり、これまで人類にとって脅威となっていた数々の病気の治療法が発見・開発され、この時代、病気を原因に命を落とす者はほぼ皆無となった。
これは平和の訪れともいえる。
それでもやっぱり、期待を裏切らず、新たな火種を探し大きくするのが人類。
病気への恐怖がない分、人々は老いに対してこれまで以上に過敏になった。
それによって製薬会社及び医療機関は、エイジング治療を最優先事項としていた。
エイジング治療とはつまり、若返り。
永遠の命、永遠の若さ、古代から人間の叶わぬ夢の代表。
そしてそれは、非現実と不可能を示していた。
ただそれは、これまでの人類にとってはの話。
製造競争と各企業間でのスパイの横行、情報の奪い合いは苛烈を極め、それは世界各国での戦争の火種となった。
そんな中、民間科学研究組織「リターン・エイジ・ニューボーン社」通称「R社」が、エイジング治療の根幹を揺るがす治療法及び、治療技術装置を開発した。
その技術は細胞組織を操作し、当事者本人の成長の速度を遅らせるというものだった。
それはある意味、人類の長年の夢である不老不死への足がかりともいえた。
しかし、世界各国では画期的な治療技術が注目されるのではなく、倫理観や道徳面での問題点、また人口の増加による地球への影響などの危険性が問題視され、発表から僅か半月で、国際特別法を制定し技術の使用を禁止した。
それでも、その革新的技術を我が物にしたい国、政府、企業、人は存在し、それまで続いていた世界各国の戦争は、前例のない激しいものになった。
一方、製作者であるR社技術員の数名が自分自身を被検体として、技術の使用を行い個人レベルでの技術の売買を始めた。
激化する戦争はとどまる事なく、行く末は世界の終末を迎えるといわれるまでの戦況となり、長く囁かれながら実際に起こる事が無かったもの、それが現実に起こる事になる。
第三時世界大戦、勃発。
重火器に加え核兵器、なかでも地震兵器を用いた戦争は、のちの世の地上に勝者が存在するのかさえ分からなくなるほど凄惨なものだったという。
人間は、どこまでも馬鹿な生き物だ。
事態を沈静化する為、常任理事国各国、非常任理事国が対話の上、調印し協定が結ばれた。それにより、アースエイジング作戦が決行される。
戦争の激化により、太平洋の海中に設置された、地震兵器一掃のための作戦であり、素粒子を用いたクォーク爆弾を使用するというもの。
各国の賛成は得られたものの、太平洋沿岸各国への影響は懸念された、それでも長く続く戦争の沈下を願い、必要な犠牲を理解した上で承認された。
多くの命、それが失われたとしても、人々は平和を願った。
結局、争いの上に何かが犠牲にされ失われていくのは、何度も繰り返した人類の悪い癖としか言いようがない。
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