第18話 再教育
下着姿でいかがわしい感じに縄で縛られている魔族の少女、スゥ。
目隠しをされ、口には穴の開いたボールを咥えされられていて、その穴からぽたぽたと絶えず唾液が零れ出ている。
見るからに犯罪的な絵面だ。
そしてそれを実行した犯人は一人、カナタ本人である。
「……いや、なにやってんのお前」
「再教育」
「……どこをどう都合よく解釈しても再教育している様子には見えないんだが?」
「こんな風にすればそう見える、かも?」
そういってカナタは目を薄く細めて見せる。
いや、それ全く見えてないだろ。
俺は「はあ」と嘆息する。
それから相変わらず身動きが取れず唾液を零しているスゥに視線を向けた。
暴れる様子はないのは今までカナタがしてきた所業の所為か、はたまた彼女の性格的に暴れるのは得策ではないと思っているからか。
「お前がどのような方向にこいつを教育するのか俺には分からないのだが」
「こう、だね。私達に絶対的な忠誠を誓わせる感じに」
「こう言っちゃあなんだが、暴力で人は従わないぞ?」
「いや、暴力じゃなくて色欲で従わせようとしている」
それはそれでどうなんだ?
「でもまあ、なかなか彼女の強情でねぇ。こういろいろ弄んであげているのに音を上げなくて困っている」
「そりゃあ一応、この子も魔王軍の魔族だからだろ」
「幹部でもあるしね。ま、ここまで強情となると、こちらとしてはもっと強引な手を使わざるを得ないよ」
そう言って彼女が虚空に手を這わせると、空中から滲み出るように棒状の何かが現れた。
一瞬またいかがわしい何かを取り出したのかと思ったが、違った。
それは、針だった。
ただし長い。
40センチほどもあるだろうか?
太さに関しては、結構細い。
鈍い銀色に輝くその針をくるりと回したカナタはゆっくりと滲みよるようにスゥへと近づいていく。
って。
「何するつもりだ、お前」
「え、こうするつもり」
俺が待ったを掛けるタイミングなんてなかった。
ぶす。
「え」
カナタの手にある針の先端が、スゥの頭頂部に突き刺さった。
「は?」
それをカナタはくりくり、くりくりと動かして見せる。
「あ、ああ、っあ。ぁ、あ……」
びくん、びくん。
スゥは身体を小さく震わせ、そしてボールの穴から零れる唾液の量が多くなったように見えた。
「え、なにやってんのお前」
「再教育」
「そうじゃなくてだなぁ……」
「私の経験を、この子に与えているんだよ。こんな風に脳を、ちょっと弄りながら、ね?」
「ええぇ……?」
割かしやっている事がグロ過ぎてアレだった。
そのままカナタはしばらくの間針をくりくりと動かしていた。
しばらくした後、「こんなモノかな?」と呟いたカナタはおもむろにぷすっと針を引き抜いた。
その頃になると、スゥの足元は凄い水たまりが出来ていた。
……なんでか、とは言わないでおこう。
「よし、再教育完了!」
「良かったな」
「試しにお兄様、この子のボールギャグ、外して上げてみてよ」
「ぼーるぎゃぐ?」
「あー、えっと。この子の口に嵌めてる奴」
「なるほど」
そう言う名前なのか。
いらない知識を知ってしまった。
とにかく彼女が可哀そうだったので、俺は言われた通り彼女の口に付いているボールギャグ、を外して上げた。
こぽぉ、と唾液が一気に零れ出る。
えほえほ、とえずき、それから「はーはー」と荒く呼吸をする。
そうしてひとしきり新しい空気を吸ったのち、一声。
「……お兄様?」
なんかカナタがインプットされたような感じになっているんだが?
俺は恐怖に背筋を凍らせつつ、仕方がないので目隠しも取って上げる。
急に視界が晴れて眩しかったのかぱちぱちと瞬きをした後、俺の事を見る。
めっちゃドロッとした暗い瞳をしていた。
「お兄様ぁ……」
「な、なに?」
「私の命、この身体、すべては貴方のものです……」
ばたり。
そう一方的に言い、スゥは意識を失った。
え、どういう事?
そして今までの出来事を近くで見ていたカナタはサムズアップしながら良い笑顔で言い放った。
「再教育達成、だねっ!」
「いや、どこがやねん」
俺は思い切りこのバカの脳天にチョップするのだった。
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