「イタズラ好きで手のかかるお前」「無愛想だけど優しい君」

@Crysez

第1話

「ったく、あの母親…」

俺は、今度の春から通うことになる朝峰高校への通学路をそんなことをぼやきながら歩いていた。

時は遡ること数十分前……







「いつまで寝てるの!早く起きなさい!!」

どんよりとした天気の中、そんな雷がある家に…というか、息子に落ちた。

「ん〜、なんだよ母さん、もうちょい寝かせてくれよ…」

「だーめ!明日から高校でしょ!準備もしなくちゃだし、あんたどーせ通学路も覚えてないでしょ!ダラダラしてないで、ちょっと行って来てみなさい!」

「え〜……」







そんなこんなで通学路を1人寂しく歩いているのだが……

「この微妙に寒い中、微妙に遠い学校に行かなきゃならんとは…うぅ、辛い」

そんなときだった

「ニャ〜ン」

「ん?猫か?」

裏路地から猫の声が聞こえてきた。

「ちょっと行ってみるか、、」

何を考えるわけでもなく、引き寄せられるように俺は裏路地へと足を向けた。



少し進むとダンボールの中にちょこんと座っている小さな猫を見つけた。

「捨て猫…か?」

見たところ別に痩せてはいないし……

ダンボールにはミルクらしきものが入っている器があるし、首輪もつけている。

「ここで誰かが飼ってるってことか…でもなんだってこんなとこで…」

ここは子供2人通るので精一杯なくらいには道は狭いし、ゴミだらけで衛生的にはお世辞にもいいとは言えない。

「誰かに世話されてる以上、勝手に連れていくわけにも行かないしなぁ…」

そう、俺は動物は好きだ。家族もそういうことには寛容だし、捨て猫なら拾っていけたのだが……

「それにしても…可愛いなこの猫」

太り過ぎではないくらいに丸っこい体、ぴょんと元気に跳ねている耳、ふわふわして真っ白な毛並み……

世話しているやつがよほど丁寧に面倒を見ているのが分かる。

「あぁこのまま連れて行きたいくらいだ……」

そう言って、俺が子猫を抱き上げた時だった。




「あーーーーーー!!!ちょっと君!私のシロちゃんに何してるの!」

そんな怒号と共に、1人の少女が俺の目の前に立った。

「その子は私がお世話してるんだよ!勝手に連れてっちゃダメなんだから!」

この出会いが、俺の運命を…いや、俺と彼女の運命を変えることになるのはまだ、俺も彼女もしらないだろう。

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