三章〜最終章
~ 三章 ~
母親は息子を見ている。駅で。
母親は息子が女の髪の毛の触るのを見る。電車で。
母親は息子が女の後で降りるのを見る。電車で。
母親は息子と女の後をつける。道路で。
母親はマンションに女が入るのを見る。道路から。
母親は息子と女の後をつける。何日も。
母親は息子が女のマンションに入るのを見る。道路から。
母親は息子がエレベーターに乗るのを見る。エントランスから。
母親は息子と同じ手口でマンションに入る。
母親は息子がいる階の下にいる。
母親は息子が女に声をかけるのを聞く。
母親はかすかなバリバリという音を聞く。
母親は女が息子を部屋に入れるのを聞く。
母親は震える。怯える。何日も。
父親は母親からの話を聞く。家で。
父親は母親に憤慨する。家で。
父親は母親を連れ出す。家から。
父親は地図を見ている。調書室横の部屋で。
父親と相棒は女のマンションを見ている。道路で。
父親は相棒が持っている女の写真を見る。覆面車で。
父親は息子の子供の頃の写真を見る。家で。
母親が父親にお茶を差し出す。深夜に。
父親は母親が泣いているのを知っている。何日も。
母親は父親の奥歯がすり減ってきているのを知っている。憤慨した日から。
息子は心の中で母親の肉じゃがを思いだしている。
女は男のために肉じゃがを作っている。
息子は心の中で父親に謝っている。
女は男のために化粧をしている。
父親と相棒はあんぱんを食べている。女のマンションの下で。
母親は息子が無事に帰ってくるのを祈っている。家で。
息子はもう何も考えらない。女の家で。
女は男が見えるところで寝る。笑顔で。
~ 最終章 ~
朝5:55。父親と相棒は女の家の玄関口に着いた。
相棒の手には家宅捜査状がある。
警官たちは警戒している。
朝6:00。女刑事がインターホンを押す。
朝6:01。男は目を覚ます。
朝6:03。女が喚く。
朝6:04。男は期待をする。
朝6:08。お隣さんは女が大勢の男に押さえられているのを目撃する。
朝6:09。息子は父親を見る。
朝6:10。父親は唖然とする。
朝6:11。息子は神様に感謝する。
朝6:12。息子は父親の胸の中でこれからはいい人間になることを神様に誓う。
朝6:20。母親は電話を置き泣きじゃくる。
朝6:30。父親は息子を軽々と抱えあげ、担架へ乗せる。
朝7:00。息子は母親に母さんの作った肉じゃがが食べたいと言う。
朝6:03からずっと。
女は男との同棲生活を警察に邪魔されたと喚いてる。
何日か後。
父親と母親の前で息子が起訴状を読み上げられる。
更に何日か後。
男は加害者から被害者になったこと、被疑者の心身を考慮し不起訴となる。
更に何日か後。
母親は息子を見て、肉じゃがの肉を箸で指す。
息子は嬉しそうにうなづく。
息子の口元から出汁が垂れる。
すぐに父親が拭いてやる。
それから1ヶ月。
母親は息子宛の手紙を破いている。
女は男からの返信を楽しみにしている。
男は熟睡の前に喚きながら目を覚ます。
父親は大丈夫だと今日も諭す。
更に一年後。
息子が「小さくなっていい人間になった僕」を著書する。
母親は息子宛の手紙を今日も破いている。
女は男からの返信を今日も楽しみにしている。
父親は大丈夫だと今日も諭す。
更に何年か後。
父親は運転席で母親を待っている。
母親は菊花と葉の色合いのバランスを花屋と相談している。
息子は父親と母親の間で困ったような顔をしている。
女は男へ手紙を書いている。
男は女の横で復讐の機会を狙っている。
who @9ranmaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます