希望と絶望! 【世界解放】が積み重ねる希望! そして絶望をふりまくイギュリ!
ピーチタイフーンを始めとした【
「ヒャッハー! オーク軍団改め【
「そこをどけぇ! スペースを確保したら鍋焚き開始だぜぇ!」
「オラオラァ、美化活動だ! 落書きを消して、街をきれいにするぞゴラァ!」
とある町ではオーク軍団がスラムに陣取り、大きな鍋で炊き出しをして住民に食事を与えたり、廃水でにおいがきつく、生活できない区域を掃除していた。オークの圧倒的な肉体能力によりスラムは活気が戻っていく。
「大変だぁ! 下水道にヘドロスライムが出たぁ!」
「武器が効かねぇ! 撤退しろ!」
「オラが出るだ。お前たちは下がってろ」
「スマシャの兄貴ぃ! いくら兄貴でも鎖でスライムを捕らえることはできませんよぉ!」
不定形のスライムは、その形状故に使うむことも叩くこともできない。魔法が使えないオーク達では太刀打ちできない相手だ。だがしかし!
「不可能を可能にするのが、レスラーだってお前たちも知ってるだべ?」
スマシャはそう言って、笑みを浮かべる。愛用している鎖を振り回し、脳裏にピーチタイフーンの戦いを思い浮かべる。一番彼女を見てきたのは自分だ。その凄さは一番理解している。
「力と技だけじゃねぇ。オラに足りなかったのは心……そう、レスラーの心だったんだ。
相手をただ倒すだけの存在と見下すんじゃねぇ。相手を認め、そして尊敬する心が足りなかったんだべ!」
言いながらスマシャは目の前のヘドロスライムを見る。長くこの下水に巣くっていた存在。町の廃水が原因でここまで歪んだ存在。それを憐れむと同時に、それでもなお生き延びた生存能力に感心する。その強さに敬意を表し、鎖を握り締めた。
「おめぇもつらかったんだべな。うっぷん晴らしたらきれいにしてやるだべ。そんでうまいもんでも食え。オラたちの鍋は美味いだべ」
スマシャとヘドロスライムがぶつかり合う。レスラーのメンタルがスマシャの鎖に宿り、そこから互いが通じ合う――
「ゴーレム起動。工事開始」
そして別の場所では、ヴェルニが複数のゴーレムを用いて荒地を開墾していた。放浪の末に岩の多い土地に寄り添うように住んでいた魔国民。農地も狩れる動物も少なく、身を寄せ合うようにして生きてきた彼らは、瞬く間に広がる土地に喜びの声をあげていた。
「この短時間でここまで土地が広くなるなんて!」
「邪魔だった岩をゴーレムにして、それで土地を広める人材にするなんて、常人なら考えられねぇぜ」
「ありがとうございます! これで、これで畑を作れば来年はもっと多くの作物を作れます!」
そこに住む人たちからの感謝の言葉。それを受けてヴェルニは瞑目した。ここまで感謝されることなど、初めてだ。復讐に生きてきたヴェルニにとって、久方ぶりに受ける感情である。
「ワシができるのはここまでだ。実際に畑を耕すのはお前たち。そこまでは責任が持てん。
だが、何かあれば力になろう」
誰かに頼られること。孤独に生きてきたヴェルニにとって、自らの力を誰かのために使うなど考えられなかった。だが、それも悪くない。誰かのために戦ったピーチタイフーンとの戦いを思い出し、これが彼女の原動力かと納得する。
「た、た、大変だぁ! ベヒーモスが攻めてきたぁ!」
「ベヒーモスの群れだと! ひぃぃ、お終いだぁ!」
「岩を取り除いたことで、こちらの存在に気づいたか。ワシの失態だな。責任を取らせてもらおう。ゴーレム格闘術の恐ろしさ、とくと味合わせてやるわ」
ヴェルニはゴーレムの腕を起動させ、ベヒーモスの群れの前に立ちはだかる。その背中に、多くの信頼を受けて。
「人に歴史あり。たとえ目立たぬ人生だとしても、無駄な人生などない」
デラギアは講師として多くの民に弁を取っていた。識字率の低い土地に赴き、ゼロから学校を立ち上げたのだ。私財をなげうって多くの教師を雇い、学校を建てた。その計画を指揮しながら、同時に自らも教育の現場に立つ。
「無駄……親に役立たずと言われた私でも、意味があるのですか?」
「親方にネジしか作らせてもらえなかったんだけど、そんな人生に意味があるのか?」
「もじとかよめないんだけど、がっこうにきていいんですか?」
多くの悩みがあった。多くの苦しみがあった。多くの涙があった。
デラギアはそれを一つ一つ受け止めた。人生。その重みを蔑ろにせず、一つ一つかみ砕いて聞き入れた。時間停止能力を用いて自分と相手以外の時間を止め、一日に何万何十万と言う人間の悩みを聞き入れた。
「意味はある。その涙もその胸の痛みもその悔しさも。いつかどこかで貴方を支える。最後の最後、倒れそうな貴方を支える爪となるだろう。
もちろん、苦しんでばかりでいいはずがない。耐えられないのなら苦しい過去から逃げて、新しい未来に進むのだ。人生とは、とても素晴らしいものなのだから」
多くの吸血鬼の人生を奪った吸血鬼デラギア。『
「たとえ他人から見て誇れない人生だとしても、一生懸命に生きたのなら意味はある。世界に爪跡を残せずとも、誰かに感動を与えずとも、世界に結果を残せずとも。
その人生は、貴方だけの宝物だ」
自らに刻むように、デラギアは多くの人達にそう告げる。この言葉が、多くの人達の救いになることを願って。
【
しかしもう下を見る必要はない。世界はこんなにも美しく、優しく、そして希望にあふれていると知ったからだ。【
希望をもって空を見上げた魔国の民は――
「バァァァァァァァァァァァァァカ! お前らに自由なんてないんだよボケェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
空を舞う、絶望を見る。
ドラゴン。大きさにすれば100mほどの体躯を持つ。多大なる魔力と力強い翼で空を支配し、その睨みは魔力と畏怖をもって人々を委縮させる。あらゆる城壁をも撫でるだけで破壊する爪。崖すらかみ砕く顎。尾を振るうだけで街は崩壊し、漆黒の鱗はあらゆる刃や魔力をも通さない。
ドッ……ドッ……ドッ、ドッ! ドッ!! ドッ!!! ドッ!!!!
心臓の音がリズミカルに響き、それが少しずつ大きくなる。巨大な何かが迫りくる。それがこのドラゴンのテーマ曲! 単調で、それでいて迫りくる力の大きさを感じさせる。
その名は魔国四天王イギュリ。漆黒暴龍の名を冠する災害的存在。
その口が開き、闇が集う。あらゆるものを無に帰す龍の吐息。絶望が、解き放たれる。
な ん か
破壊が、魔国を包み込む。人の身などでは抗うこともできない暴君。闇の吐息を吐き、爪と牙で蹂躙する。歩くだけで地面が揺れて営みは破壊され、空を飛ぶだけで風圧がすべてを吹き飛ばす。
しかし人よ忘れるな。絶望に抗うのが希望の力。
巨大な絶望を前に、ピーチタイフーンが立ち上がる!
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