第6話 リア充は爆発しない
「ところでエヴリンって誰? この前、宇宙人にやられた時に叫んでたよね?」
この前アレクシスがやられた時に叫んでいた名前を思い出したので問いかけた。
「やられてない! 予想以上にハンマーが大きくて避けられなかっただけだよ」
アレクシスが興奮気味に反論する。
あっ、失敗した。
やられた事は触れない様にしようと思っていたのに、思わず言ってしまった。
「はいはい、やられてないのね。それで、呼んでたのは誰よ?」
「恋人のエヴリンだよ。すっげぇ綺麗なんだ。お姫様だからね」
や、やっぱり恋人なのね。
アレクシスからハッキリと聞いて少しガッカリする。
はぁ、勇者だから現代社会では浮いて見えるけど、これだけカッコ良いから恋人がいない方が不自然か……
「それでやられた時に叫んでいたのか。無様だなアレクシス」
「酷いよ晦冥。あんな金属で出来た人型の生物なんて見た事ないだろ? 怖いに決まってるだろ?」
「それでエヴリィィィィィィンとか言っちゃったのね。恋人思いなのは良い事よ」
「エヴリィィィィィィンなんて言ってない。エヴリンだ」
「ふっ、勇者のくせに女の名前を叫ぶとは恥ずかしいと思わないのか?」
「そういう晦冥はどうなんだよ。いないのか恋人?」
「我は魔王だぞ。王なのだから妻の一人や二人いるものさ」
「一人や二人?! 魔王とはそういうものなのか」
自身満々に言い切る晦冥にアレクシスが気圧される。
流石、王を名乗るだけあるわね。
妻が本当に何人もいるのか分からないが、王としての威厳は本物だ。
実際に結婚していると考えると、晦冥の年齢的に10才くらいの娘さんがいそうよね。
ふふっ、現代のお父さん達みたいに、娘の親離れが寂しい頃かな。
「そんな事言ってるけど、娘にパパ、おヒゲ痛いとか言われて嫌われてたりして」
「嫌わないでくれぇぇぇぇっ! 姫花ぁぁぁぁっ!!」
晦冥が突如うなだれて泣き出す。
どうしたっ! 魔王の威厳!!
アレクシスが嬉しそうにしてるじゃない。
「ハハッなんだ晦冥も僕と同じじゃないか。僕だってエヴリンに会えなくて泣きそうなんだ」
「そうだよな勇者だって異世界に単身赴任したら辛いよな。済まなかったなアレクシス」
「気にするな。俺達
がっしりと抱き合うイケメン二人。
単身赴任ってなによ。
それに……独り身は私だけなのね。
迷惑かけられた上に、逆ハーレム展開もないなんてヒドイ。
二人に手を突き出し心の中で叫ぶ。
『リア充爆発しろ!』
目の前にファンタジー要素がゴロゴロ転がっているのに、私の心の叫びには一切答えてくれなかった。
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