第4話 娼館の主

 勇者と魔王と宇宙人な警察官と出会った翌日、二日続けて休む訳にはいかないので出社する事にした。

 有難い事にアレクシスと晦冥かいめいが守ってくれる事になった。

 二人が協力してくれるなら、あの警察官に襲われても安心……だよね?

 元々二人が原因で襲われたのだから、シッカリ責任を取ってもらわないとね。

 恐る恐る家から出ると、ご近所の佐藤さんと鈴木さんと出会った。


「おはようございます、佐藤さん、鈴木さん」

「あら、莉子りこちゃん、おはよう」

「おはよう、莉子ちゃん。そちらのイケメンとは、どのようなご関係?」

「そうよ私も気になっていたのよ。ねぇ、教えてよ莉子ちゃん」


 いつも通り挨拶をしたが、私の後ろの二人が気になるようだ。

 佐藤さんと鈴木さんがアレクシスと晦冥かいめいを食い入る様に見つめている。

 勇者と魔王でも、おばちゃんパワーは苦手なようね。

 二人共、佐藤さんと鈴木さんの対応に困っている。

 さて、どうしようかな?

 そう思っているとーー


「でぇたぁなぁ。召喚士ぃ!」


 銀色でメタリックなボディを光らせて、モッ何とかさんが現れた。

 流石の佐藤さんと鈴木さんも面食らって動きを止めた。

 二人を止めるなんて、ナイスだよ!

 後は目の前の『次元な警察官の宇宙人?』の誤解を解いて会社に向かうだけね。


「だから、召喚士じゃないって言ってるでしょ。ほら、今日のラッキーアイテムは普通のスカーフだから。召喚アイテムないでしょ?」

「そんな物は関係ない。貴様が召喚したのだ。召喚で呼び寄せた二人が傍にいるではないか?」


 モッ何とかさんが私の後ろの二人を指差す。

 アイツ懲りないなぁ。

 どの様に説得しようか悩んでいると、脇で佐藤さんと鈴木さんが井戸端会議を始めた。


「ねぇ、鈴木さん。娼館ってアレよね?」

「佐藤さんも、そう思ったの? あの莉子ちゃんが娼館だって? 働いてるのかしら?」

「いや、あの人の言い方では経営している方だと思うわよ」

「あらやだっ。私、莉子ちゃんを見る目変わっちゃったわ」

「可哀そうよ。何か事情があるかもしれないじゃない」


 全言撤回。

 最悪だよ、このメタリック宇宙人警察。

 ご近所の佐藤さんと鈴木さんが変な誤解してるじゃない!

 早く何とかしてよ二人共!

 私の評判が大ピンチよ!


「僕が戦うから晦冥かいめいは莉子を頼む!」

「承知した。いくぞ、莉子!」


 晦冥に抱えられて猛スピードで駅に向かう。


「逃がさんぞ召喚士!」


 私を抱えて逃げる晦冥を宇宙人が追いかける。

 だが、アレクシスが妨害する。


「行かせるか!」

「邪魔だ!」


 任せたよアレクシス!

 そう思えたのは一瞬だけだった。

 宇宙人が取り出した巨大ハンマーがアレクシスを直撃した。


「エヴリィィィィィィン!」


 叫びながら遥か彼方に吹き飛ばされていくアレクシス。

 叫んでいたのは恋人の名前だろうか……

 よしっ、見なかった事にしよう。

 男の子だからカッコ悪いところ見られたくないと思うし。

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