神様によりゲームは異世界への入口になりました

相坂ねび

第1章

第1話

ニーズベル会社会議室


「それではこれで発表して問題ないな?」


「やっとここまで漕ぎつけたか…長かった…。」


「一度は諦めていたフルダイブのVR、手がけられたことが嬉しいです。」


「営利目的に走るなよ?あの存在はいつでも目を光らせているぞ?」


「生きて超常現象にあうとは思いませんでしたよ…」


「まさか異世界へ意識だけでも行けるようになるなんて…その窓口としてVR装置を使うとかビックリですよ…」


「VRMMOをしているようで意識だけはしっかり異世界に行っているんですよね…まぁ…ゲーム設定やらシステムはあの存在がこちらの世界のゲームを真似て作成するみたいですが新しいハードを作るのは大変でした…」


「安全面に注視するだけで済むが…デスゲームなんて今時流行らないぞ。」


「チート対策としてはハードを分解したりプログラムの改ざんを行った場合は壊れるようにしています。決して安い物ではないですが、チーターに慈悲なんて必要ないですし注釈を書いていれば問題ないでしょう。」


「ソフトはハードを入手した際にプロダクトキーで1度だけインストール出来るようにしています。間違ってもネット上にプログラムは流れないと思います。」


「異世界の神からの招待状って具合だな。世界を新たに作成し、滅亡しかけた世界の住民を招きいれ、発展させるためにこの世界の人々を招待とは…神様のやることはスケールが違うな…」


「その神様の意向に沿おうじゃないか。ま、本当に異世界へ行っているのは秘密だが…では【かみさま転生、異世界へようこそ】の始動だ。」


 その日、世界に激震が走った。今ではそう珍しくもないVRMMOだがフルダイブのものはなかったからだ。また、NPCにしても複数の返答が設定されているが機械じみているため、没入感に欠けるものばかりであった。


 それらを改善し翻訳機能も設定されているため、国が違っても問題が生じることはない。よりリアルへ、よりグラフィックの向上がなされたゲームということで話題になった。しかし、第一陣として世界では1万ロットしか販売されない。これは一気に異世界へ人が押し寄せると混乱を招くということで人数制限するためだ。世界で1万ロットという椅子取りの参加者は300万人にも達した。



 

「はぁぁぁ!?お、お、お前当選したのか!?」


「あーうん、昼食後にニーズベルから連絡があった。」


「な・ん・で誘った俺が落選でお前が当選しているんだよ!!」


「なんでだろうなぁ…」


「いくつものMMOを渡り歩き、ギルドマスターになった回数も数知れず、公式のPVPでも優勝経験がある俺を差し置いて、なんでゲーム経験のないお前が当選してるんだよ!」


「そんなの俺が知るわけないでしょ…」


 このさっきから騒がしい奴は大学で同じクラスの…なんだっけ?クラスでも浮いている俺にいつも構ってくるんだが…自分に酔うタイプなんだよね。ぼっちにも優しい俺カッコいいみたいなこと前に言ってた。あと、名前順で講義室に座っていくんだが、こいつの好きな人が俺の後ろらしく、見に来るためってやばい顔で答えてたんだよな…


「なぁなぁ、その権利さ、俺にくれない?」


「転売も無理だって知ってるでしょ?」


「売らんわ!俺がするの!なーいいだろ?」


 今日はいつも以上に絡んでくるな…この話題、出さないほうが良かったか…


「応募の際に個人情報が必要になってただろ?当選後にも再度入力する必要があるし、フルダイブの適正検査に血液検査やアレルギー検査もあるから無理。」


「あーそんなこと書いてあったような。よく見てないわ!ちぇ、使えねえ奴。」


 そう言って俺の席から離れていった。あいつの目論見だと権利を譲ってもらうために俺を誘ったんだろうな。今日は4限までだから帰りに対応の病院に行くか。診察結果は直接ニーズベルに行くし、控えとしてこちらにも送られてくるから俺が何かする必要もない。


「ね、ねぇ災難だったね。いつもよく我慢できるね…」


 声をかけてきたのは後ろの席の…名前が出てこない…


「あ、その顔は名前が分からないって感じだね?私は飯塚奈央だよ、青木直哉君。」


「あー…すまん、普段クラスの人と絡まないから名前を憶えてなかった。よろしく、飯塚さん。あいつはまぁいつもの事って感じかな。」


「あの人と仲良かったなら申し訳ないんだけど、私のこといつもチラチラ見てきて気持ち悪いんだよね…」


「俺の事をダシにして見に来てるようなものだと思う。あいつが来ていると寝る時間が減るんだよなぁ…」


「ふふ。いつも講義の合間寝ているもんね。夜更かしはダメだよ?」


「夜は早く寝ているんだけどなぁ…寝るのが好きなだけだよ。のんびりと日向ぼっことかも最高。」


 俺が答えると飯塚さんは笑いながら答えた。


「縁側でお茶を飲んでいるおじいちゃんみたいだよ。」


 そんな生活してみたいな。


「それにしても、青木君ってゲームするんだね?」


「いや、まったくしたことないな。あいつが誘ってきたのは応募させて当選したら権利を貰うつもりだったんだと思う。飯塚さんは…意外とゲームしてそう。」


 俺が答えるとびっくりしたような顔をした。


「え…私、ゲームしているように見える?」


 改めて飯塚さんを見る。染めているわけじゃない茶髪でショートボブ、身長は低めで細いのに出るとこは出てる、童顔がコンプレックスなのかちょいギャルっぽく見える化粧の仕方や服装だけど他の女子に比べたら大人しい印象を受ける。多分、周りに合わせたのか大学デビューでまだ馴染んでいないように見える。…もう2月だけど。ちなみにゲームのサービス開始は4月で、サービス開始日に俺はちょうど20歳になる。


「うん、そんな印象がする。ギャルっぽく見えるけど清楚な感じもするし。ただ、雰囲気かなぁ。あいつのするゲームの話を分かっていそうな感じ。」


「うぅ…そ、そんなことで分かっちゃうんだ…そうだよ、私も結構ゲームをするし今回、運よく当選したからあの人の話にびっくりしちゃって…」


「そうだったんだ。まぁ安心してよ、あいつは当選していないから。もし、ゲームの世界で会えたらよろしく。」


「こちらこそよろしくね。私もそれなりにゲームをしてきたから力になれることもあるだろうし…」


「っと教授が来たみたいだ。」


 そう言い俺達は講義に耳を傾けた。しかし…1万ロットの狭い門をくぐり抜けた人がこんなに近くにいるとはビックリだ…今日の講義が終わったら春休みに入るしサークルも入っていない俺はのんびりと過ごすかな。ゲームとか事前に調べるより行き当たりばったりのが新鮮な気持ちでいいだろうし、凝り固まった捉え方をする危険性も出て来る気がするから真っ新な状態のがいいよな…?



 ゲームは全然やらないが世界観を知るのは結構好きなんだよなぁ…設定というか。【かみ転】は女神様が世界を4つの大陸(十字に分断されている)で創造し、各国(人族、獣人族、エルフ族、魔族)に統治を啓示した。世界は丸くなく、果てしなく大地が続いているが、各大陸は分断されているので行き来することが出来ない。果てしなく続く大地を探索するためにプレイヤーは世界に降り立つ。


 なるほど。プレイヤーは開拓者ってことなのか。何々、レベルではなく熟練度制で死んだら装備やお金を全ロス、スキルはLvが下がるとな。これってローグライクっていうやつかな?探索は慎重にならざる負えないな…国家間で開拓状況を争うわけじゃないよね?どの種族も仲良さそうに手を繋いで輪を作っているイラストもあるし。プレイヤーはどこが1位だーとか言いそうなんだが…俺はのんびりと過ごせればいいからあまり戦闘には興味ないが、自己防衛のためにある程度強くなる必要があるかどうかが問題だな。スキルの覚え方は生き方、生活の仕方で変わるとな?まぁ関連性のない物を覚えるのもおかしいもんな。


 教授の声が遠く聞こえ始め、俺は眠りについた。休み明けが楽しみだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る