第3話 Think tankでsink out 踏まれ沈む その3
日の目を見ないつらい新規開拓、パワハラ、降格と減給・・・というサラリーマンとして全くいいところのなかったE社であったが、得難い経験もできた。自動車メーカや家電メーカ等の日本のトップ企業との商談経験を重ねることができたことだ。商談前には深夜まで事前調査をして資料を整え、プレゼンの予行演習をおこなって臨む。その緊張感を経験できたことはサラリーマンとしての財産である。ただし、全く刃が立たず自分の限界を知ることもあった。外資系日用品メーカへの業務コンサルティングの商談では、相手側はドイツ人ボス、E社側はシンガポール人のコンサルタント、商談は英語で進んだ。営業として場を仕切るべき立場であったが、事前に練習していたにもかかわらず、挨拶も自己紹介もろくにできなかった。苦い経験である。
また、仕事で干されて閑職になったとき、不思議なことに突然女性運が舞い込んできた。得意先企業のシステム全国展開プロジェクトにて、地方の営業所でシステム本番立会を行うという仕事にアサインされた。中国地方の小さな営業所に出張したとき女子職員との甘い出会いがあった。一目見たときに何か衝撃のような感覚を持ったのだ。出張から戻ったあとそれが忘れられず、その女子社員に冗談メールを送付してみた。するとすぐに返信があり、少しだけチャットを楽しんだ。彼女もヤスオと出会ったとき、ビクッとする感覚をもっていたそうだ。チャットでけではなく、だんだんエスカレートして、昼休みに電話で会話するようになった。ヤスオは社外で、彼女は営業所の会議室で。そして、彼女が関西の本社に出張に来るというとき、「たこ焼きをご馳走するよ」というヤスオの誘いに彼女は乗ってきた。そうして、遠距離ながら関係ができてしまったのである。いつものように仕事中にチャットをしていると、「今日は嫌なことがあった、今からそっちに行く」という知らせが来た。どういうことかわからず半信半疑で新大阪に向かうと本当に彼女は新幹線から降りてきた。帰すわけにも行かないので、ホテルを取り部屋に入ると、「コートの下はOLよん」と制服のままであった。思い立ったときの女子の行動力に圧倒されたヤスオであった。その後も関西と中国地方との間をとって倉敷や姫路で会う時間を作った。仕事でプライドを失ったヤスオにとって彼を受け入れてくれる彼女は精神的な支えになった。
彼女とは数ヶ月関係が続いた。しかし淡白なヤスオにとって彼女は肉体的な欲望が強すぎ、手に負えなくなり関係を終わらせた。週刊誌には読者の告白体験記がいろいろ載っていて、そんな好色な女性がいるなんて作り話だろうと思っていたが、身を持って体験することになった。一瞬であったが、情熱の炎が急激に激しく燃え上がり、そして燃え尽きて過ぎ去った。
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