第十一話 『奇襲』

『16:00になりました。ゲームを開始します』

 ジーニがの声がどこからともなく聞こえてくる。

 例のエアイヤホンと同じ原理だろうか?


 といっても、することはない。

 ジーニから送られた、使用される銃の3D画像を確認したりする。特徴的なデザインで、銃口には天空に佇むドラゴンの絵が入っていた。


 そして、それを見た後は、専門家への連絡の確認だったり、装備の確認だったりをする。

 


 装備は、煙幕・催眠スプレー・閃光弾などなど色々な小物を持っている。


 果ては超低質量レジャーシートなんてものまで入っている。

 …なんで、買ったかは聞くな。超最新ゴム素材、薄さ、0.01mm。

 っていう言葉に思わず反応して買ってしまったんだ。


 とは言え、これで一通りの確認が終わってしまった。


 時刻は、まだ、16:07。


 オートバイで来るのにも、紅葉学園からここまで来るのに30分以上かかった。

 少なくとも、あと、10分以上は暇だ。

 とりあえず、ゲームプランでも考えようと、何の気なしに海の方を向くと、バイクに乗った黒髪の美少女がいた。


 ヘルメットは着用していない。

 なので、その顔は見間違いようもなくはっきりと確認できた。


 教室で見た黒川沙耶香だった。


(どうして、こんなに早えーんだよ!

 くそが!

 しかも、この方角は、学園とは反対方向だぞ。どうなってやがるんだよ。)


 そう、ありえないのだ。


 最短ルートでも、学園から20分はかかる場所に、彼女は7分あまりで着いたことになる。


 俺は、思わず声に出す。


「おい、どうなってやがるんだよ!ジーニ、これは反則じゃねーのかよ?」


『現状、”鬼ごっこ”における反則はありません。』


 パンッ


「って、うわぁ」

 黒髪ロングの美女、黒川沙耶香が銃を撃っていた。

 辛うじて、銃弾は俺の脇を通過した。


「ふんっ。口ほどでもありませんのね」

 そう言っている合間にも、黒川沙耶香は近づいて来る。


 次は当てられる。


「うるせぇよ!これでも、くらっとけよ」

 俺は、爆弾型の煙幕を使用する。


 タンッ


 軽い音と共に煙幕が一気に広がる。

 思っていた以上の白い煙が辺り一面をおう。

 その間に俺は、バイクにまたがりエンジンをかけ、追いかけてきた黒川紗耶香から逃げる。


 300mほど駆けた所で、分岐点があった。真っ直ぐ行く道と、斜め左に行く道だ。

 だが、直進の方向には『工事中』の文字が見え、方向を変えざるを得ない。

 

 ブレーキをかけている暇のない俺は、斜め左に行くを選択する。


 後ろをバックミラーで見るが誰もいない。

 俺は、安堵する。

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