性差万別

シヨゥ

第1話

「あそこの席のふたりはだいぶ仲が温まってきているな」

 戻ってきた友人がそんなことを言う。

「どれ?」

「あそこの奥からふたつ目の席だ」

 その席を見ると男女が2人向き合って座っていた。残念ながらこちらからでは女性の顔は見えないが、男性のほうは楽しそうに話しているように見えた。

「それにしては女性の方、背もたれにもたれないで緊張しているように見えるけど? あれってまだ気を許せるほどの仲になっていないんじゃないの?」

「あれは気があるっていう証拠」

「それって逆じゃない。初対面だから緊張してしゃんとするっていうもんじゃ」

「それは男の場合。しゃんとするってことはきれいに見えるだろ。女は好きな相手にはきれいに見られたいもんだ。だから気がある男に対してはしゃんとする。デートを重ねてもしゃんとしているってことは気があるって証拠だな」

「そうなのか。知らなかった」

「っでその逆が男だな。はじめはしゃんとしている。ちゃんと見られたいからな。っで、気を許してだんだんと甘えたくなってくる。そうすると背もたれによりかかるようになったり、またの開き方が大きくなったりしてくる。お前から見てもだいぶ背もたれに寄りかかっているだろう?」

「そうだね」

「横を通ったときにだいぶ股を開いていたからな。そこで俺は『こいつらはだいぶ仲が温まっている』って思ったわけよ」

「なるほど。じゃあ今日プロポーズでもするのかな? 男の方が何か隠し事しているみたいだし」

「隠し事?」

「そう。男が机の下に手を隠し続けている。男がそれをやるってのはなんか腹にある証拠だよ。君にも覚えがあるだろ?」

 その問いかけに友人は顔を逸らす。するとちょうどカップルが席を立った。

「まぁなんにせよ幸せになってくれたらいいなと思うよ」

「それもそうだな」

 カップルを目で追いつつ二人のため息がシンクロする。そして

「「彼女ほっしぃ」」

 そんなうわ言のような声が再びシンクロするのだった。

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性差万別 シヨゥ @Shiyoxu

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