第2話 親ガチャのもう半分とそのほかのガチャ。
親ガチャの父親部門は盛大に外した私だが、母親部門は当たりと言える。(ハズレというより不謹慎な感じがするのは私だけだろうか)
行きたい高校と大学に通わせてもらえたのは母の力が大きいと思う。
しかも大学は私学の美大で一人暮らし。
高校生までというか大学生までうちは中流階級だと思っていた私は、大学に行けることが当たり前だと思っていた。過去に行けるのなら、あの頃の私を張り倒したい。お金を稼ぐのって大変だと社会人になって知ったのです。愚か者よ。
しかも浪費癖のある酒飲み喫煙者の父を抱えながら自分も仕事をして家計をやりくりしていたのだ。自分がやれと言われたらブチギレる。
大学の学費は父も出してくれたので、その点は恵まれていたと言えるけど。
それに、母はデザイン系の仕事をしていた人だからか考え方が柔軟だった。
教育のポリシーは「人に迷惑をかけなければ何をしてもいい」である。
だから、ある意味自由に生きてきた面もある。
漫画は親子で回し読みするし、アニメも一緒に観る。(たまに好きな作品ディスられて喧嘩になるけど)
私の知人には親がオタク趣味を許してくれない、とか、学校ではオタクというのを隠して生きてきたという人も多いが、私は一番身近な人間がオタクということもあって、自分の好きなものをあまり隠すことなく生きることができた。
私は中学校では完全にオタク趣味に目覚めたが、なぜか学年全体漫画好きが多く、オタクを理由に嫌なことを言われたりされた記憶はない。趣味については抑圧をされることなく生きてこれたというのは幸せだと思う。
現に今の職場ではみんな私がオタクということを知っている。それがいいことなのかどうかは知らんけど。
母へは感謝の気持ちでいっぱいだが、一度だけ、母を恨んだことがある。
新卒で就職した会社で精神を病み(この話はまた今度詳しく書きます)当時父と別居していた母に意を決して地元に戻りたいと切り出したことがあった。
あの時は本当に精神がギリギリで、毎日死ぬことばかり考えていた。
通勤の途中で交通事故に遭いたいと思っていたし、職場の帰り道に大好きなミスチルの「HANABI」を聴きながら「こんなクソみたいな世の中に価値なんてあるわけねぇだろ!」と心の中で八つ当たりするくらいには病んでいた。(私がクソなだけでミスチルは何も悪くない)
そして最後にすがったのが母であったが、「帰っておいで」とは言ってもらえなかった。
おそらく、母もあの時父とのことで精神が憔悴していたと思われる。無職の娘の面倒なんてみれないだろう。今の私なら分かる。
今思えばあの時が私の人生のターニングポイントであった。
母に突き放され、この世で頼れるのは自分だけなのだと悟った。
子供の私はあの時に死んだ。
良くいえばあの瞬間に腹を括った。
今では母ともいい距離感で付き合っているし、あそこで地元に帰っていたら今の不死鳥のような私は存在しなかったと思う。
私のしたいことや好きなことを否定しないでいてくれた母がいたから、今の私がいる。
それに、ずっとあの父から守って育ててくれた。
父の横暴に神経をすり減らしながら、私と弟をほぼワンオペで育てた母。
私が大学を卒業して、父と母は離婚した。
小学生の時にも大きな離婚の危機があって、その時母に「お父さんと離婚してもいい……?」と聞かれた。その時私は嫌だと言ってしまった。
片親がまだまだ少ない時代で、普通じゃない家族になるのが嫌だったし、その頃の私はまだそこまで父の異質さに気づいていなかった。
もっと早くに離婚していいよって言ってあげればよかった。
だって、離婚してからの母は、結婚していた時よりも活発で楽しそうだった。
本来の母はそういう人なのに、私達家族のために押し殺していたのかな、と思った。
親はいつか自分より先に逝く。
離れて暮らしている分、一緒にいられる時間も少ない。
会いに行ける時には会いに行って、できる限りの親孝行をしたい。母には。(父は知らん)
母の他にも親戚に頼もしい存在がいる。
父の従姉妹のおばさんだ。
父より年上で、父は頭が上がらない。なにせ父はおしめを替えて面倒をみてもらった御恩がある。
就職の話をする時におばさんを連れて行ったのもそれを知っていたからだ。「俺が話しにくい状況を作って勝手に話して帰って、あれで話したつもりか」と言ったことから分かるように、父との力関係は歴然だ。
そしておばさんは父の親戚だが、母や私の味方である。このことから父のヤバさをご理解いただけるだろう。
うちの父のヤバさを理解している数少ない人なので、よく電話で愚痴を聞いてくれるし、絶縁状態の実家の状況もたまに教えてくれる頼もしい存在である。
ヤバイ父とヤバイ就職先のおかげですっかり口が悪くなってしまった私の愚痴を、面白いといって笑いながら聞いてくれて、勝手に第二の母の様に慕っている。
あと、高校時代からの友人。
とっても柔軟な考えの彼女は、自身はオタクではないが、人が好きなものを一緒に楽しむことが好きという特殊スキルを持っており、私のオタクトークをいつも楽しそうに聞いてくれるし、イベントにも積極的に参加してくれる。
私の創作活動も応援してくれていて、私以上に私の味方でいてくれる。
天然さんだが、いざという時には頼りになる、強い女だ。
父に携帯を突き返して逃走した翌日、私に付き添って携帯ショップに連れて行ってくれたのは彼女だ。
彼女に怒涛のごとく職場の愚痴を言って、「ごめん、こんな愚痴ばっかりで……」と謝ったら、「えっ、今の愚痴だったん? めっちゃ面白かったで」と返してくれたことが今でも嬉しいし、愚痴を面白く言う自分の新たな可能性に気づけた。(愚痴が新たな可能性ってなんだ)
ちなみに、彼女のことを私は名字で呼び捨てにして呼んでいるので、前述の親戚のおばさんに彼氏と思われていた。
親ガチャの半分はハズレだったが、それ以外のガチャはなんだかんだ当たっていると思う。
ハズレのアクが強過ぎるが、ハズレがなければ自分が恵まれていることに気付けなかったと思う。
人生というのはうまくできているもんだ。
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