わたしの部活の話。

ねむねりす

吹奏楽部とわたし

 中学校に入学した。

 初めての、「部活動」という経験に、私の胸は躍っていた。と記憶している。

 もともとは、合唱部に入る予定だった。声優になりたい、と夢を綴った、小学校の卒業アルバムにもそう書いた。

 しかし、何がきっかけだったのかは覚えていないが、急に「吹奏楽部」という選択肢が私の頭の中に降りてきたのだった。

 どちらも、音楽系の部活。だけど、合唱部は歌、吹奏楽部は楽器で、音楽を奏でる。

 歌を歌う、ということは、幼いころからたくさんやってきたことだった。でも、楽器は、ピアノしか経験がない。管楽器で音楽を奏でる、ということが自分にとってこれまでにない体験だったのが魅力的だったのだろう。

 私は、吹奏楽部への入部を決めた。


 部活体験期間中は、ずっと吹奏楽部に通った。初めは、色んな楽器を体験していったが、ある時、私は一つの楽器に出会った。


「音、出しやすいよ」


 そんな先輩の宣伝文句につられ、私はその楽器に近づく。

 ユーフォニアム。初めて聞く楽器だった。

 「チューバのちっちゃいバージョン」。名前の響きが個人的に覚えにくかったので、ちゃんと名前を覚えるまでは、そんな認識をしていた。

 椅子に座り、先輩から、まずはマウスピースだけでの音の出し方を教わる。

 確かに、音が出しやすかった。

 

 金管楽器は、マウスピースに当てた唇を振動させて音を出す。

 ホルンやトランペットも体験したが、これらはマウスピースの直径が小さめで唇の一部にしか当たらず、マウスピースを当てたところでない場所がブルブルと振動してしまうことが多く、個人的には少し難しかった。

 しかし、ユーフォニアムはそれらよりもマウスピースが大きく、当てたときには唇のほぼ全体を覆うので、音が出しやすかったのだ。


 マウスピースを楽器につけて、持ち方を教えてもらう。その通りに楽器を構えて、吹いてみる。


 あたたかい音がした。


 私は、このやさしい音色をとても気に入った。


 大きさも、重すぎずちょうどいいくらいだと思ったし、先輩からはメロディーのパートも多いと聞いた。

 私は、この楽器を担当したいと思った。

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