ロシアっ子の下着エプロン

 会長は高級車に乗ってクールな表情で行ってしまった。あの車、地響きのようなエンジン音だったなぁ。



「なんだか怒涛どとうの一日だった」

「そうだね、大二郎。今日もいろいろあったね」



 舞阪駅から弁天島駅へ。

 コンビニに寄ってからアパートへ向かった。毎日欠かさず購入している最強のお菓子『おいしい棒』と、普通に暑いのでアイスクリーム二個を買って帰宅した。



 今日も暑かった。

 こういう日は、冷房をガンガンにしないとな。電気代なんて気にしている場合ではない。冷房なしなんて死んでしまう。

 19℃設定のフルパワーで冷気を送り出し、部屋を急速に涼しくしていく。エアコンのリモコンを操作していると、リアがいきなり提案した。



「わたしはお風呂に行ってくるけど、水着でも裸でも良いけど一緒に入る?」

「なっ……!」


 以前のアレか。

 でも俺は倒れてしまったからな。またその不安があるし、迷惑は掛けられない。



「やめておく。リアの方こそ、足はもう平気か?」

「うん、もう大丈夫だよ~。普通に歩ける」

「そうか、それは良かった」


「ねぇ、大二郎」

「ん?」


「Хочу целоваться с тобой」(キスしたい)


「あ……後でな」


 さすがにもう、その言葉だけは理解できるようになっていた俺。段々とロシア語も理解できるようになってきたぞ。以前に比べると随分と成長したな。自画自賛、自分で自分を褒めてやろう。



 ◆



 いつものように仕事を進めていく。

 集中しまくっていると、気づけば一時間経過していた。そろそろ、リアがお風呂から上がっている頃合いだろう。ダイニングキッチンへ向かった。


 戸を開けると、台所に立つリアの姿があった。



「んぉ? リア、晩飯を作ってくれているのか」

「あ、大二郎。そそ~、もう直ぐ出来るからね」



 食欲そそる良い匂いが漂っていた。

 ロシアっ子なのに、あんな本格的に料理ができるんだもんなあ。きっと良い嫁になる。


「リアのエプロン姿、似合いすぎだろう」

「そう? 普通だと思うけど」

「体のラインがこんなにくっきり明瞭めいりょうで……つい見惚れてしまうよ。これだけで飯が食えそう」

「……うぅ。なんだか照れるな。どうせなら、裸エプロンにしておけば良かったかな」

「そ、それはマズイって」


「じゃあ、下着エプロンとか」

「ま~、それならギリギリセーフかなあ」



 と、口を滑らせると、リアは脱衣所へ向かっていった。しばらくして戻ってきた。



「じゃ~ん。下着エプロンだよ♡」

「リ、リア……!」


 前は見えないけど、後ろ姿が驚きだった。なんて肌の露出……白い肌があんなに際立っているだなんて……奇跡のコラボかよ。そして、今更思い出したけど某新世紀に登場するツンデレヒロインもやっていたし……ええやん。



「どう、かな」

「い、良いよ、それ。リアは、どんな格好でもお姫様だな。氷のように美しくて綺麗で可愛い。後はなんと言ってもその雪のような銀髪。これが最高ポイントだ」


「えへへ……♡ そんなに褒められると、今夜は大二郎のこと……襲っちゃうかも」

「それはちょっと嬉しくも困るかな」



 困惑していると、次々に料理がテーブルに置かれていく。なんだこの和風ハンバーグ定食的な……豪華すぎィ!


 ご飯は赤飯、何故か豚汁もセット。

 まん丸のお皿には、ゲンコツほどのサイズのハンバーグと半熟卵。大根おろしがたっぷりで美味そうだ。やべ、意思に反してヨダレが出てしまうぞ。



「一緒に食べよっか」

「今日は気合が入っているなぁ、リア。こんな贅沢な料理を作ってくれるとか……苦労を掛けて良かったのか。手伝いとか」

「うん、いいよ。全部、大二郎の為だもん。美味しいものを沢山食べて欲しいから、味わって食べてね」



 はしを受け取り、俺はさっそくリアの手料理をゆっくり丁寧に味わっていく。うまああああ……!!

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