生徒会長のキス
会長は『
アカウントだけはまだ未作成だったようで、ライン電話でレクチャー。さくっと終わり、ゲームを起動してもらった。
「最新のパッチ当たりました?」
『ええ、完了しました。あとはログインすればいいのですよね』
「そうです。そのままキャラクターを作成してください。その後、チュートリアルですよ」
『ありがとうございます。おかげさまでゲームを遊べそうです』
その後、キャラクター作成まで進み何とか『はじまりの街』まで入って貰った。この時点で結構時間を使った。ので、少し歩いて回ったり、話すくらいが限界だろう。
俺はいつものキャラで『はじまりの街』で待機。少し経つと会長のキャラが登場した。
「えっと……その無駄におっぱいの大きい金髪エルフが会長ですよね?」
「え、ええ。似合いません?」
「いえ、種族をエルフにするとは思わなかったので。てっきり、ヒューマンでやるのかと」
「せっかくなので趣向を変え、他種族を選択しました。なので、エルフの女剣士ですね」
そうきたか。
このゲームには『ヒューマン』、『エルフ』、『ドワーフ』、『ドラゴン』、『ファーリー』、『エクスマキナ』、『セレスティア』の七つの種族がある。
特にエルフは魔力が高いし、初心者向け。しかも、女性キャラだと可愛くて人気。会長がそれを選んでくるとはな~。
「名前は『スズ』……って、リアルネームじゃないですか!」
「い、いけませんでした?」
「あー…その昔は、リアルネームの人もいましたけど、今時は珍しいですよ。ていうか、特定されちゃいますって」
「もう作り直すのも面倒なのでいいですよ~」
「会長がよければいいんですが。えーっと……じゃあ、ゲーム内なので、会長って言うのも変なんで……スズさんって呼びますよ?」
「呼び捨てで構いません」
「よ、呼び捨てですか……? でも先輩に向かって無理ですよ」
「ゲームの中では、かみ……いえ、ドグマくんの方が先輩さんですから。なので、遠慮なく呼んで下さい」
まあ、確かにリアルネームを付けてしまった会長が悪くはあるんだが。ていうか、まさか俺に名前を呼んで欲しくてわざと付けたんじゃないだろうな……?
「じゃ、じゃあ……スズ」
「…………」
会長は何故かフリーズしていた。
「あの~? ラグってます?」
「い、いえ! その……嬉しかったので」
「そ……それは良かった。かいちょ……じゃなくて、スズ。せっかくなので、最強装備を差し上げますよ。これで一気にレベルアップしてください!」
俺は長年溜め込んだS級レア装備を十個ほど渡す。ついでに大金もプレゼント。会長はこの状況に焦っていた。
「こ、こんなにですか!? あのよく分かりませんけど、凄そうです」
「ええ、実際凄いですよ。通常、これだけの装備を集めるのに半年は掛かります。とりあえず、全部装備して下さい。レベリングはまた暇があったら一緒にやりましょう。今日はもう遅いので落ちますか」
「こんなに良くしてくれてありがとうございます。短い間でしたが、楽しかったですよ~。これを趣味にするかもしれません」
おぉ、ついに会長の趣味が出来るのか。それは良い事だ。
「じゃあ、かいちょ……いや、スズ。ログアウトするよ」
普段から会長と言いまくっているので慣れないな。まあ、慣れるしかないか。
「ログアウトボタンが消えてるなんて事、ないですよね?」
「デスゲームなんて始まらないので期待しないで下さい」
ついツッコム。
これは某VRMMORPGではないので、そんなイベントは発生しませんッ。
◆
ログアウト完了後、ライン電話が切りかわり『ビデオ通話』になっていた。画面に会長のいつもと変わらない整った顔が現れる。
「ど、どうしたんです?」
「神白くん、名前を呼んでくれて嬉しかった……これはお礼です」
画面越しでキスをしてくれる比屋定先輩。……俺は思わずドキッとした。ドキドキした。心臓がバクンバクンと音を立てていた。
……会長が俺の為に……。
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