脱ぎたての下着

 山盛りのペナングをひたすら食べ続け……完食。俺もリアもしばらく動けなかった。恐るべし超超超超超超特盛ペタマックス。もう二度と食べたくないが……まだ作ってないのが残っている。しばらくはペナング生活だな。



 食事を終えると、リアは立ち上がる。


「わたし、お風呂行くね」

「分かった。俺は自室でゆっくりしてるよ」

「……あのね、大二郎」


「どうした、神妙な顔で」

「うん、良かったら……脱衣所にいてくれるといいな。ひとりぼっちが怖いの」


「え……」

「だって、今日あんな事があったから」



 その気持ちは痛い程によく分かる。

 また棚橋が襲ってくるんじゃないかと……そんな不安で俺も辛かった。今はなるべく、リアのそばに居てやりたいし、俺もリアのそばにいたい。



「分かったよ」

「うん」



 リアが入浴するタイミングを待って、俺はノートパソコンを持って脱衣所に腰掛ける。仕事をしながらリアを相手する作戦だ。



「って……!」



 ほぼ間違いなく、脱ぎたての下着がカゴに引かっけてあった。わざとらしいというか、絶対わざとだろ!



『大二郎、わたしの下着、盗んじゃダメだよ~』

「ぬ、盗むかっ!」

『あとヘンな事に使用しないでね」

「するかッ!!」



 ああ、もう。

 ただでさえこの扉の向こうには裸のリアがいるっていうのに、目の前に下着が……くそっ、落ち着かないじゃないかっ。



 ええい、仕事仕事。



 集中し、カタカタとキーボードを打っていく。あと三日後には納期だからな、進めておかねば。



『ねぇ、大二郎。今なにやってるの?』

「仕事さ。ノーパソ持ってきて進めてる」

『そっか。わたしはね、今、胸を洗ってる』


「……む、胸」



 一瞬想像して鼻血を噴き出そうになった。……あっぶね! 二十万円するノートパソコンが鼻血でぶっ壊れるところだったぞ……!



『何か物音するね。大二郎、興奮してる?』

「し、してないぞ……多分な」

『ふぅん。……あ、大二郎、そこにあるシャンプー取って』


「っ!? そこにあるって、どこにあるって?」


『カゴの中にあるの。ごめん、取って』



 あ、あの下着の中にあるのかよ!!

 くそう、絶対にわざとだ!!



「……」

『早く。髪を洗いたいから』



 やるしかないのかぁ……仕方ない。

 そっと手を伸ばし、カゴに手を突っ込む。リアの下着らしき布の感触が手に伝わってきて、俺はドキッとする。



 ……こ、これは想像以上の破壊力。一歩間違えればヘンタイなんだが、同意の元である。問題はない――はずだ。



「これか!」



 下着の下には、確かにシャンプーのボトルが眠っていた。……ふぅ、なんとか取れたな。後はこれをリアに渡すだけだ。


 扉をそっと開け、隙間から渡す。



「ありがとね、大二郎」

「……あ、ああ」



 それから俺は脱衣所で三十分ほど過ごす事になった。長いような短いような、幸せな時間を過ごした。



 ◆



 時は――零時。



 リアは、あずさと電話すると言ってから、ずっと話しているようだった。俺は自室に戻ってゴロゴロとしながらスマホ。掲示板サイト『5.5ちゃんねる』を閲覧していた。



 すると『会長』からメッセージが飛んでくる。



「ん、会長か。こんな時間まで起きているんだな。どれどれ」



『あずさちゃんと連絡が取れないので暇です……。神白くん、相手して下さい|ω・)』


 あ~、今はリアと会話中だからな。なんだか恋バナっぽい話をずっとしている。壁がそれほど分厚くないので、ちょいちょい内容が聞こえるんだよな。



「分かりました。少しの間なら話し相手になりますよ」

『嬉しいです|ω・) では、私から振っていいですか|ω・)』



 今日は、この顔文字を連発してくるのか。まあ、いいや。



「はい、なんです?」

『神白くんは、オンラインゲームやります|ω・)?』

「やりますよ。『Excaliburエクスカリバー Onlineオンライン』なら、かなり前からプレイして、最近、リアともプレイしたんです」


『な、なんと!Σ(・ω・ノ)ノ ……先を越されていましたか』


「会長もやってるんです?」


『ええ、弟がやっているんです。最近、勧めてくるのですが、せっかくやるなら神白くんとがいいなと|ω・)』


「マジっすか。いいですよ、一緒にやりましょうか?」

『三十分ほどですが、お願いします|ω・)』



 まさかの展開。

 会長がオンラインゲームをね……。ていうか、弟くんの方が多趣味だな。気が合いそうだし、一度会ってみたい気もするぞ。

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