間接キスとラッキースケベ
会長の手料理を
趣味の話から、どうしてこうなった。
おかずの味付けは完璧で美味しいけどな。
「う、美味いですね……会長」
「褒めていただき嬉しいです。……ああ、そうです! こうして神白くんのお世話をする趣味というのはどうでしょうか」
「それは……趣味にされたら嬉しいですけど困るっていうか」
会長が俺の世話、最高じゃないか。
ヒモへの第一歩になるかもしれんな。
「これも趣味の候補にしましょう」
「なんだか着実に趣味が増えてきていますね、会長」
「ええ、お陰様で」
しかし、なんでわざわざ図書室で二人きりで話す必要があったんだろうか。こんな話なら、生徒会室でも良かった気がするけど……もしかして、リアやあずさには聞かれたくないとか、どうしても二人きりになりたかった――とか。
まさかなぁ?
――まあでも、会長にはお世話になっているし、たまには比屋定先輩の事を知るのも悪くないだろう。そうだな、たまにはこっちから質問攻めしてみるか。
「会長、質問良いですか」
「いいですよ。なんでもお答えします」
「それはありがたいです。じゃあ、さっそくですけど、なんで図書室なんです?」
「良い質問ですね。はっきり言いましょうか、あずさちゃんにお願いしたんです。どうしても、神白くんと二人きりでお話がしたかったから」
顔をほんのり赤くして会長はそう言った。俺と二人きりで……それは嬉しいけどね。でも、まだハッキリしていない。
「どうして俺なんです?」
「……神白くんって案外、いじわるなんですね」
「え……」
会長、なんだか困った表情をしている。
ま、まさかこの感じ……本当に俺と二人きりで話したくて? つまり、好意があってって事だよな。そうでなければ“あ~ん”とかしてくれないし。
「神白くん。お弁当ですが、後は食べて下さい」
「……いや、でも」
さっきまで会長が口をつけていた箸を渡される。……こ、これって間接キスになるんじゃ。いいのか、会長は男子の中でも結構人気があって、告るヤツも月に一人は現れるほど。そんなちょっとしたアイドル的存在の会長と間接キス……。
勇気がいるけど、でも。
でも、これは会長のご好意。
「お茶もありますから」
ぱくぱく食べて手作り弁当を完食。
幸せを感じるほどに美味かった。
「ありがとうございました……美味かったです。会長、料理だって立派な趣味でしょう。こんなに美味いんですから」
「そんなに絶賛してくれるとは。でも趣味じゃないんです」
「さすがにそれは無理がありません? 感動するほど美味しいんですよ!?」
「…………無趣味なんです」
めっちゃ照れてるー!!
あんな顔を真っ赤にする会長は初めてみた。心なしか手もぷるぷる震えているし、俺との視線も合わせなくなっていた。
そんな会長を見て、俺もちょっとドキドキしてきた。
「わ、分かりました。会長は無趣味なんですね」
「そ、そうなんです……。それにしても、なんだか暑いですね」
「まあ真夏日ですからね、この図書室は扇風機が回っているくらいですし」
その時点で不思議と沈黙が訪れ、会話が途切れた。お互いに何を言っていいか分からなくなっていた。……なんで、こんな暑いんだろうな。
気づけば予鈴が鳴っていた。
「あ……時間ですね」
「いっけね! リアとあずさを忘れていました。もう戻らないと」
――けれど、会長は俺の手を引っ張った。
振り向くと会長はやっぱり顔を赤くしていて、唇を震わせていた。……なんだろう、この感じ。まるで告白されちゃうみたいな。
「……神白くん。あっ!」
震えていたせいか、足を滑らせる会長は俺の方へ倒れてくる。俺は支えるしかなくて、腕を支えようとしたのだが、すり抜けて会長の胸を支えていた。
「うわっ! ご、ごめんなさい、会長。今のはわざとじゃないですよ!? 会長が倒れてくるから、床との衝突を避ける為に仕方なくだったんです」
「理解していますよ。それに、神白くんにならどこを触られても嬉しいですから」
いいのかよ!
俺は胸から手を離して、距離を取った。
……会長の、大きいし、芸術的に柔らかくて凄かったな。
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