バスに揺られてデートへ
生徒会室を出ると、会長がリアと話していた。
「会長、何しているんですか」
「どうもです、神白くん。ちょっとリアちゃんが退屈そうだったので、話し相手をしてあげていたのですよ。……ああ、今回の件なら心配なさらず。ちゃんと理解していますからね」
そう微笑んで生徒会室へ入っていく会長。その手にはお弁当。そうか、気づけばもうお昼の時間か。
「リア、お待たせ。昼になってしまったな」
「お腹空いたね、何か食べよう」
「……ちなみに、会長とは何を話していたんだ?」
「え。そ、それは……ナイショ」
どうやら話せない事らしい。
ちょっと気になるけど、追及はしないでおこう。今はとにかく腹が減った。
◆
食堂で昼を済ませると、今日の事件もあって担任の梅中から『帰っていいぞ』という、まさかのありがたい一言を戴く。
俺とリアは早退となった。
「授業って気分でもないもんな。帰るか」
玄関にある下駄箱に上履きを戻そうとすると、そこにはラブレター的な手紙が入っていた。俺はビックリして
い、一体誰がラブレターを!?
今どきラブレターって……嘘だろ?
「ん、どうかしたの?」
「い、いや……何もないよ」
リアにバレないように平静を装って誤魔化す。というか、リアが仕込んだ可能性も? まさかな。
――そのまま学校を出て、二人して門を出る。と、同時にリアが提案した。
「せっかくの午後だし、どこか寄っていかない?」
「そうだな。時間もあるし……う~ん、スタパでも寄っていくか」
「いいね! スタパ好き。タローズとかトトールとかあるけど、やっぱり一番はスタパだよね!」
「俺は“コメタ”が一番だけどな。シロノワールが絶品なんだぜ」
「コメタかぁ、大二郎が好きなら、そこにする~?」
「んや、今日はスタパにしよう。コメタはまた今度な」
ミンミンとセミが雄叫びを上げる暑い夏の中、俺たちは舞阪駅へ向かっていく。そこからバスを利用し、約十五分掛けて『
さっそく舞阪駅に到着して、そのままバスへ乗車した。このクソ暑い気候なので、さすがに冷房がガンガンで気持ちが良い。
「涼しいね~。って、バスで行くの?」
「スタパは、徒歩で行ける距離じゃないからな。志都呂のショッピングモールにあるのさ。この周辺だと、そこが一番デカイかな。服でも本でも何でもあるし、飲食店もたくさん。ゲーセンもあるし、寄っていくか」
「そうなんだ、いいねそれ。大二郎、ちなみに、これってデートだよね?」
「あ、ああ……そうだな、デートになるのか」
学生服のまま女子と二人でショッピングモールへ向かう。これはれっきとしたデートと言えよう。
バスの狭い座席に座ると、リアも隣に座って来た。肩との距離がほぼない。なんだ、いつもキスとか密着とかしてるのに、これは新鮮で、謎の緊張が走った。
「Се́рдце коло́тится」(ドキドキする……)
うっかりだったのか、リアはそんな風にロシア語でつぶやく。そっか、今まで遠くへ行くだなんてしなかったもんな。俺もちょっとドキドキしてきた。
俺、人生で初めてロシアっ子と――リアと学生デートするんだ。よし……思う存分、遊びまくってやるか……!
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