水着を見せたい♡

「弁天島海浜公園にしよう。ここから歩いて三分ってとこだ」

「近ッ! 近所かあ。でも大二郎となら、どこでも楽しいからいいよ」


 そんなさわやかな笑顔に俺も釣られて笑顔に……いかん、つい頬がゆるむ。俺は照れ隠しするように半ば強引にリアの手を取って、アパートから出て行く。


 ギラギラと日光が照り付けて肌を焦がす。こんな暑さでは、たちまち熱中症となろうな。雪国育ちロシアっ子のリアには、キツイ気候かもしれない。


「大丈夫か、リア」

「うん。秘密兵器の麦わら帽子があるし、いざとなったらコレも使うよ」

「コレ~?」


 てのひらには小さく折り畳まれた物体が。なんだこれ。


「コレ、折り畳み傘だよ~。紫外線UVカット機能付」

「なるほど、そんな便利なモノがあるんだな。花柄デザインがオシャレで可愛いな」


 しかもワンタッチ機能まであって、一発で開くらしい。なんて高性能なんだ。



 そんな他愛のない話を続け、島内を進んでいく。リアと楽しい会話をしているとあっと言う間に『弁天島海浜公園』に辿り着いた。さすが徒歩三分である。



 直ぐに湖が広がり、その湖の守り神であるかのように高さ18mの鳥居が鎮座ちんざしていた。そんな湖は、海水浴を楽しむ観光客で大賑わいだった。


 ちなみに、この湖は『汽水湖きすいこ』であり、海と繋がってしまっている。なので地理上は『湖』、漁業法上は『海』、河川法上は『川』だったりと随分とややこしいようだ。



「広いねぇ。うん、水がんでいてキラキラしていて綺麗」


 俺はどちらかと言うと、リアの横顔がキラキラして綺麗だと思った……なんてな。


「ここは砂浜だが、あっちには釣り場とか遊覧船、サイクリングもあるぞ。まあ、この時期なら遊べる場所だな」


「え~、なんだー。なら、水着を持ってこれば良かったなぁ」

「リア、水着持ってるんだ?」


「うん、だって海水浴場が近いって聞いていたから。こんな近いとは思わなかったよ~。水着ね、大二郎の為に買ったんだよ」


「マジかよ……それは嬉しすぎる。見たかったなぁ」

「今から着替えようか?」

「いや、手間だろうし今度でもいいけど」

「見せたい……大二郎にわたしの水着姿を見せたい」


 そんなに見せたいのか。

 いや、俺も是非ぜひ見たいけどな。

 リアの水着姿……想像イメージしただけで……たまらん。絶対可愛いよなあ。


「任せるけど、大丈夫か?」

「徒歩三分だし、平気。じゃあ、待っていてね。最初に大二郎に見て欲しいから、絶対にここで待っていてね♡」


 投げキッスをするリアは、走ってアパートへ向かっていった。おいおい、張り切りすぎだ。けれど――うん、楽しみだなぁ。

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