電話

　時計に目をやる、もうすぐ10時、約束の時間だ。

　家も近くて、毎日のように会ってるのに、この時間に電話するのが僕らの小さな約束になっていた。

　今日は彼女から、かかってくる日だ。

　携帯を片手にコールを待つ……鳴るのはわかってるのに、なんでこんなにドキドキするんだろう？

「惚れた弱みだよ」と、冗談ぽく友人らに答える僕。

「それじゃ、私は惚れてないみたいじゃない！」と真顔で怒る彼女。

　なんで、こんなに愛しいんだろう？『人を好きになる』それが、初めてわかった気がした。

　10時ジャストに電話をしてくる彼女、きっと時計を見ながら、コールボタンを押すんだろうな、そんな姿が目に浮かぶ。

　携帯の時計が10時を表示した。と、同時に鳴り始める携帯……明日は朝から遊びに行くんだから、寝不足のならないようにしないとな……僕だって、時間気にして携帯見つめてるんだから一緒か。

　小さく笑うと、僕は彼女からの電話にでる。

　Fin