魔物を倒そう⑥

「やった! 倒せたわ!」

「お疲れ様」


 あれから二、三日はグレイウルフの群れと遭遇戦をした。

 倒すの自体は初日に難なくこなせていたが、せっかくなら色々な戦法を試そうと言うことになり、数日間グレイウルフの群れと戦闘しているのだ。


 たしかに、一言で戦いにくい場所と言っても色々とある。

 段差があったり、木々があったり、足場がぬかるんでいる場所なんかもある。

 それぞれの場所で色々な対応はできるが、実際やってみないといい点や悪い点はわかりにくい。


 足場が悪いところなんかではこちらも戦闘しにくかったが、グレイウルフも戦いにくそうにしていて、相対的に言って、楽に戦闘できていた。


 対処法だって、敵を誘導したりとか色々あるし、何度も試すのはいいことだと思う。


「とりあえず、思いついたことは全部試せたんじゃないか?」

「そうですね。だいたい全部試せたと思います」


 ミーリアは手元にあるリストを見る。

 リストには全ての項目にチェックがされていた。


「焦ることでもないし、足りない部分があればその都度対処すればいいだろ」

「それもそうですね」


 グレイウルフがいなくなるわけでもないし、遺跡に突入するのはブラックウルフを倒したあとだ。

 遺跡の状況を見ればまた何か思いつくかもしれないし、今無理やり完全にする必要もないだろ。

 柔軟性を持たせておいた方が色々とやりやすいかもしれないしな。


 それに、この辺は全部五人でやってもらった。

 俺がある程度教えても良かったのだが、五人で意見を出し合った方が今後のためにもなると思ったのだ。


 軽い気持ちでやってもらったが、俺が予想しなかったようなシチュエーションをみんなが予想していて、俺の方が驚かされることもあった。


「しかし、スイの観察力には驚かされたな」

「スイは昔からああいう子ですよ」


 みんないろいろな発言をしていたが、中でもスイの発言には何度か驚かされた。


 スイの発言にはグレイウルフはどういうところだと戦いやすいとかの発言が多かった。

 自分たちがどうこうというより、グレイウルフがどうという発想でシチュエーションを考えていたのだ。

 下草が生い茂っている場所ではグレイウルフの走り方が変わっているとか、グレイウルフが走りやすい場所、とびかかってくるときはどれくらいの距離から跳躍しているのかとかもちゃんと理解しているらしい。


 グレイウルフの特性や、この土地の特性なんかをよく見ていたんだと思う。


 特に驚いたのが、グレイウルフが魔の森の木を避けていることだ。

 俺たちは魔の森の木を傷つけないように戦闘している。

 魔の森の木を傷つけてしまうと、魔の森が魔物をけしかけてくるのだ。


 どうやら、それは魔物であるグレイウルフも一緒らしい。


 一度、リノがグレイウルフが木を攻撃するように誘導した。

 すると、魔物が木を傷つけたグレイウルフを襲いだしたのだ。


 グレイウルフは魔の森の一部だと思っていたが、そういうわけではないらしい。

 グレイウルフは魔の森の指示を聞いているようなのに、不思議なものだ。

 飼い主とペットみたいな関係なんだろうか?


 何にせよ、グレイウルフも木を傷つけられないとわかったおかげで木々を盾にするような立ち回りもすることができるようになり、かなり楽に戦えるようになったと思う。


「そろそろ昼食時だ。今日は帰ろう。あと二三日グレイウルフと戦闘した後、ブラックウルフのいるエリアに戻るか」

「そうですね」


 いろいろなことを試したし、そろそろグレイウルフとの戦闘は切り上げてもいいだろう。

 もともと、アリアたちが魔物との戦闘で気を抜いていたからこういう練習をしてもらったのだ。

 格下のグレイウルフにてこずったおかげで魔物を侮る様子はかなり減った。

 これ以上は必要ないだろう。


 そろそろブラックウルフを倒す準備を始めてもいいだろう。

 遺跡のことも気になるし。


 俺たちは明日からのことを相談しながらゆっくりと村へと戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る