魔物を倒そう⑤

「さっきの戦闘はどうだった?」

「すごく。戦いにくかったわ」


 魔の森の外まで撤退してきた俺たちは戦闘の反省会をしていた。


 アリアたちは少し落ち込んだ様子を見せたが、すぐに立て直した。


 これまでも色々と苦労してきたみたいだしな。

 これくらいのつまづきなら、これまでに比べれば大したことないと思っているんだろう。


 それに、これまでも探索で問題が起きなかったわけじゃない。

 その度にこうしてみんなで意見を出し合って解決してきた。


 いつもは俺も意見を出すけど、今回はあまり口出ししない方がいいかな?


「それにしても、ミーリアはいい動きをしたな」

「私は攻撃手段がないので、とっさにアレを使ってしまいました」


 それに、最後は俺じゃなくてミーリアが対処して終わった。

 だから、チームとしては負けてないとも言える。


 ミーリアは試作品のスタングレネードを使った。

 タイミング的には完璧だっただろう。

 俺がなにもしなくても、無事に切り抜けられたと思う。


 魔物も撃退できるとか、本当に対人間用の魔道具か?


「俺がフォローに入る必要はなかったよ」

「一かばちかでした。今考えると、味方だけが行動不能になってしまう可能性もありました」


 確かにそうか。

 もしもアレがグレイウルフに効かなければ危険な状況になっていた可能性はある。

 相手は普通に動けるのにこちらはスタングレネードの影響で動きが制限されているのだから。

 状況は間違いなく悪くなっていただろう。


 実際、光も音も効かない魔物というのも存在する。

 そんなやばい奴が出てくるのはかなり先になるが、今から意識しておくのはいいことかもしれない。


 それに、俺にスタングレネードがあまり効かなかったように、魔力で十分に鍛えた相手にはあれは効かないと思う。

 魔力は感覚も鍛えるけど、外的な攻撃からの抵抗も同時にあげてくれるからな。

 総魔力量が百を超えれば効かなくなるかな?


「今までは完全にこっち有利の地形で戦ってたけど、遺跡の中だと細い通路で戦うこともあるし、戦いづらい状況になる可能性も十分にある」

「そうね。レインが危険だといっていた意味がようやくわかったわ」


 今まではこちらが戦いやすいように場所を選んでいた。

 そのため、同格か格上の相手とも有利に戦えていた。

 だが、これから先もずっとそれができるとは限らない。

 地形が悪ければ今回みたいに格下の相手でもてこずる場合があるのだ。


 例えば、これからいく予定の遺跡は元が民家なだけあって通路はそこまで広くない。

 人がすれ違うのがやっとという感じだ。

 そんなところで戦おうと思えば、今までのようにはいかない。

 それぞれの距離も違うし、そこから生まれるコンビネーションも変わってくる。

 今回以上に問題が発生するだろう。


「次は今回ほど戦いにくくないと思うけどな。戦いにくいと言うことが分かっていれば警戒もできるし、対策も立てられる」


 今回はなにも知らずに挑戦した。

 そのせいで、小さなズレに大きくつまづいてしまった。

 だけど、ズレがあると言うことをちゃんと知っていれば少々のズレは対処することは簡単だ。


 小さな段差はそれがあると知らなければつまづいてしまうけど、あると分かっていればつまづくことがなくなる。


 そして、そのズレは予めはある程度予測できる。

 俺が教えてもいいけど、俺は何かと力技で何とかなっちゃうからこういうのを探すのは苦手なんだよな。


 今後のためにも自分たちで考えてもらうのがいいだろう。


「あと数回場所を変えて練習しようか。多分、グレイウルフの数体なら数回で克服できると思うし」

「そうしましょう」


 そう言ってアリアたちは集まって反省会を始める。

 もう手慣れたもので、スラスラと色々なことを決めていく。


 そんなアリアたちの様子を眺めながらすぐに対処してしまいそうだなと思った。

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