特産品を作ろう!パートⅡ③

「結構集まったな」

「そうね」


 数日の探索でかなりの量の素材が集まった。

 これだけあれば必要量のポーションを作れそうだ。


 なんか、キーリの採集能力は上がった気がするな。

 たぶん、冬はここまで採集できてなかったと思う。

 これもスイと同じようなステータス外のスキルが付いているからだろうか?


 もともとステータスを測る魔道具は対魔貴族が鍛錬の結果を数値化するためにどこかから持ってきたものだし、あれは魔力を一定の法則で数値化しているだけの道具だ。

 だから、あれに出ないからといって無いとは限らない。


 そういうスキルを可視化する方法もちょっと探してみようかな。

 魔術にそういうのあるかもしれないし。


「でも、耐性をつける薬品は作りたくないのに、ポーションは作るんだな。どっちも飲むもので、体に悪そうなのに」


 耐性をつける薬もポーションもどちらも明らかに薬という色をしている。

 薬とポーションの最大の違いは薬は実体があるが、ポーションは魔力の塊で実体がないことだ。

 ポーションは振りかけることでも効果を得られるが、飲んだ方が高い効果が得られる。


 ポーションは魔力の塊だから使った瞬間から魔力に変わっていって体に効果を与える。

 だから別に飲まなくても効果は得られるのだが、体外で使うとポーションの効果が外にも発散してしまうので、逃げる場所がない分飲んだ方が効果が高いらしい。

 何かの魔導書にそんなことが書いてあった。


 だから、みんなにもポーションは飲むように言っている。


 その二つに何か違いがあるんだろうか?


「だって。耐性をつける薬の材料は毒ばかりだけど、ポーションの材料は全部食べられるものじゃない?」

「そうなのか?」


 俺は材料の中から一つのキノコを取り出す。

 紫色で見た目いかにも「毒です」という感じのキノコだ。

 耳を近づけてみると、キノコの中からピリッ、ピリッと電気が流れるような音が聞こえてくる。


 まじか。

 これ食えるのか。


「そうよ。その紫電キノコは昨日のスープに入っていたわよ。煮ると茶色になっちゃうんだけど」

「うそだろ?」


 俺は思わずキノコを採り落とす。

 キノコは机の上に落ちた瞬間、バチバチッと弱い静電気を発散した。


 これ、食べたのか?

 昨日?


「そうよ。食べられるキノコは煮るとだいたい白色か茶色に変わるわね」

「まじか」


 たしかに昨日はキノコスープが出た。

 白と茶色の普通のキノコかと思ってたけど、煮れば色が変わるだけなのか。


 そういえば、キノコはそれぞれ味や形が少しずつ違っていた。

 ちょっと変わった形なだけで全部同じキノコだと思っていたけど、もしかしたらあれは全部別々のキノコだったのか?


 煮る前の色とりどりのキノコが入った鍋を少し想像する。


 ……ちょっと食べられる気がしない。

 俺、料理ができなくてよかったかもしれない。


「食べられるものから作るものなんだし、体に害はないでしょ」

「……そうだな」


 前世では食べ合わせとかもあったし、一概に大丈夫とはいえない気もする。


 化学反応でできる毒とかもあったしな。

 酸性系と塩素系の薬品を混ぜたらいけないとかな。

 いや、あれはどっちも食べられないか。


 錬成鍋での錬成は普通の調合とは違うし大丈夫か。

 こういう時、前世の知識が中途半端にあると変なことを考えちゃうな。


 不安にさせても良いことはないだろうし言わないでおこう。


「じゃあ、調合をやっちゃうわね。ポーション瓶をもらえる」

「おう」


 俺は『収納』の中から大小さまざまな瓶を出していく。

 もう数が少なくなってきたし全部出してしまった。

 もう中身は全部捨ててあるから全部空っぽだ。


「あれ? もう小サイズのポーション瓶ってないの?」

「あー。そういえば、切らしてたな」


 俺はもともと自分用のポーションしか持っていなかった。

 非常時に使うためのもので、実際に使ったのは数回だけだ。


 中には状態異常耐性とか、回復とかのポーションが入っていた。

 だけど、自作でとても飲めたものではなかったので、中身を捨ててキーリに渡していたのだ。

 無理やり錬成したものだったから味が犠牲になってしまったのだろう。

 というか、ポーションが飲める味のものだとキーリが作ったポーションを飲んだ時初めて知った。

 初めてキーリの作ったポーションを飲んだ時はこんなにおいしいものだったのかと感動してしまったくらいだ。


 そんなわけで、一人分だったからポーション瓶の量はそれほど多くない。

 今までは作っていたのが非常用の回復のポーションだけだったから五人ともに行き渡っていたけど、ポーションの種類が増えていくと必然的に足りなくなってくる。


 今回の『恐慌』状態から回復するためのポーションを作ったことで在庫が底を突いたのだろう。

 百本を目標に作ってるから当たり前か。


「困ったわね。瓶がないと作れないわ」

「そうだな」


 ポーション瓶は錬成のために必要なのだ。

 ゲームのように錬成したら瓶ごとできたりはしない。


 適切なサイズのポーション瓶がないと錬成が失敗してしまう。

 なぜか大きいサイズのポーション瓶を使っても失敗する。


 かと言って、大きいサイズのポーション瓶に合う量のポーションを作ろうとすると、今度はキーリの魔力量が足りなくなる。

 ポーションの生成量が増えると必要な魔力量が一気に増える。

 倍の量を一度に作ろうと十倍くらいの魔力量が必要になるのだから、本当に不思議だ。


「まあ、次にジーゲさんが来たときに注文するしかないだろ」

「……」


 キーリは何かを考え込む様に腕を組む。

 その視線は錬成鍋と俺の間を行ったり来たりしている。


 なんか嫌な予感がするな。


「ねぇ。レイン?」

「どうした?」

「私自分でポーション瓶を作ってみようかと思うんだけど、どう思う?」


 キーリは突然そんなことを言い出した。

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