魔の森で鍛えよう!⑥
「三人とも何を盛り上がってるの?」
「私にも教えてもらっていいですか?」
ミーリアとキーリが食堂に戻ってきた。
ミーリアもいつもの落ち着いた様子に戻っている。
「ちょっと、これからの修行について話していてな。修行の効率を上げるために魔の森で修業をしようって話をしていたんだ」
「……そう。そのほうが効率が上がるんだったらそのほうがいいかもね」
「レインがそれが必要だと思ったんでしたら、私は従います」
ミーリアとキーリは魔の森に修行に行くことに反対しなかった。
やはり、昨日死にそうな思いをしたのがかなり効いているのか、二人とも強くなることにどん欲だ。
「それじゃあ、三人にはそれぞれ必要になる魔術を教えるとして、ミーリアとキーリの二人には勉強をしてもらいたい」
「「勉強?」」
俺はあらかじめ『収納』から取り出しておいた本を二人に渡す。
渡した本は『ゼロから始める魔術の手引き』という本で古代魔術師文明に書かれた本で魔術のことが広く浅く書かれている。
この本は幸い、かなり昔に現代語訳されたことがあるらしく、翻訳版も手に入ったのだ。
まあ、翻訳版もかなり古い言い回しが多いので、翻訳版を読んでもよくわからないと思うが。
「これは『回復』の魔術とか体を治す魔術について書かれている。ミーリアの『回復』の魔術の回復力を上げるのにも役立つし、薬草なんかについて書かれているから、支援をやってもらう予定のキーリの役にも立つはずだ。これを読んで古代魔術師文明の言語を学んでほしい」
「わかったけど、この本どこから出したの?」
「それはみんながある程度自衛できるようになったら教えるよ」
キーリがジト目で俺のことを見てくるが、まだ教えるつもりはない。
まあ、春には教えてもいいかなと思えるくらい強くなっている気がするが。
「ほかにも本を持ってるけど、ほとんどが古代魔術師文明の文字で書かれてるから、古代魔術師文明の言葉を習得するつもりで取り組んでほしい。理想はほかの三人に古代魔術師文明の言葉を教えられるようになることだ」
「わかりました。でも、私たちが三人に教えるんですか? レインが三人に教えればいいんじゃないですか?」
「申し訳ないけど、古代魔術師文明の言葉はなんとなくで読めちゃうから、俺から教えるのは難しいんだ」
昔ジルおじさんに教えようとしたときは「お前の言ってることは全然わからん」といわれて5分で終了してしまった。
「まあ、質問には答えるから、何とか自力で習得してほしい。まあ、無理なら無理で別の方法を考えるから」
「わかったわ」
「やれるだけやってみます」
俺は二人の健闘を祈るのだった。
***
「じゃあ、この辺で採集を始めるか」
「「「「「了解」」」」」
俺たちは魔の森に採集に来ている。
魔の森で鍛えると言っても、最初の方は採集をこなしながら今は魔物から逃げるという感じだ。
アリアたちは魔の森で魔物と戦うつもりでいたようだが、今のアリアたちにグレイウルフと言われる魔物と戦うのは無茶だ。
魔力の量で人が強くなっていくように魔物も魔力の量で強さが決まる。
グレイウルフの魔力の量は10くらいだろう。
アリアたちは今大体2くらいだ。
戦うなら余裕を見て平均で7くらいはほしいところだ。
だから、今は逃げる。
まあ、いざとなれば俺が魔物を倒すが、魔物を倒しすぎても森の奥から別の魔物が出てきて大変なのだ。
それに魔の森で活動するだけで魔力量は増えていくからわざわざ戦う必要はないのだ。
「じゃあ、予定通り、リノは偵察に行ってきてくれ」
「わかったぜ! レイン兄ちゃん!! 『身体強化』」
リノは身体強化をかけてこの辺を駆け回りながら敵を探してもらっている。
まあ、素早さの必要な行動を森の中で取っていればそのステータスが上がりやすい。
「じゃあ、ミーリアの『祝福』が切れるまで採集だな」
「できるだけ長く維持します」
ミーリアは魔術の設定値をつけることはまだできていない。
だが、どうやら『発光』の魔術を使って夜に本を読んでいたらしく、長時間魔術を維持するのはかなりなれてきているらしい。
そこで、光系統の『祝福』と言う魔術を全員にかけてもらった。
これはかけられたものの魔力を活性化して効果を上げる魔術だ。
およそ一割増しになるくらいなので、魔力量が少ない今はお守り程度だ。
まあ、かけないよりはマシだし、光系統の魔術の強化や魔力を操作する能力を上げてもらうためにかけてもらっている。
「キーリとミーリアは薬草を探して、採集自体はキーリが『採集』の魔術でやってくれ」
「せ、責任重大ね」
キーリには『採集』の魔術を使って採集をしてもらう。
この魔術なしでも採集はできるのだが、魔術で採集する方が採集物が最高の状態で採集できる。
「スイも、瓶にかけた強化魔術が切れそうだったら言ってくれ」
「わかってる、無理そうになれば伝える」
スイには持ち帰るための鞄や瓶に強化魔術をかけてもらっている。
普通は付与魔術で強化瓶なんかを作るんだけどキーリの知識量と技術量では付与魔術は使えないので、スイの魔術の訓練も兼ねて魔術で強化してもらっているのだ。
「ねぇ。私も一緒に探したほうがいいんじゃない?」
「……別に探してもいいけど、『身体強化』をかけながら探せる?」
「う、それは……」
「荷物が、動き回ると、強化魔術がかけにくい」
「に、荷物……」
アリアには『身体強化』の魔術をかけた状態で荷物持ちをしてもらっている。
これが耐久力を上げるのに一番いい方法なのだ。
正直、女の子が一人で大量の鞄を持っている光景は何か罰ゲームでもしているみたいで見ているこっちもあんまり気分が良くないのだが、修行のためだし、仕方ない。
「グレイウルフがきたー!!」
リノが戻ってきたことで今日の採集は終了となり、全員で全速力で村へと戻った。
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