第5話 ゲーム開始 2日目



2日目(火曜日)


朝になりいつものように学校に着いた。

昨日の事がまだ忘れられなくて、思い出してしまう。

もしかして教室に入っても舌打ちされないんじゃないかと頭をよぎったが、そんな甘い話があるわけないと我に返り頭を振った。

「ガラッ」教室のドアを開ける。

いつものようにドアの音でみんなこっちを見て誰が来たか確認する。

私は自分の席に歩いてる途中、武田くんの「うわっ!根暗ちゃんが来たぞ」と言う声が聞こえた。

そこまではいつもの朝と同じ光景だった。

いつもならその後に高橋くんが舌打ちをするのがお決まりだ。

それなのに今日は舌打ちをしてこなかった。

その行動に私だけではなく、みんなも気づき驚いていた。

最初に口を開いたのは武田くんだった。

「えっ!高橋どうしたんだよ!」

私含め、武田くんのその言葉にみんな同じ顔をして高橋くんを見た。

「ん?何がだ?」

高橋くんは何のこと?と言う顔をして応えた。

「何がだ?じゃねぇよ。いつも舌打ちしてただろう。」

武田くんは高橋くんにストレートにそう話した。

「別にどっちでもいいだろう。してもしなくても。」

高橋くんのその意外な言葉にクラスのみんなが驚いた。

高橋くんのさっきの言葉に、武田くんは驚きを隠せない様子で加藤くんは言葉を発してはいなかったが、驚いている様子とあまり見たことが無い表情で自分を落ち着かせようとしているようにも見えた。

クラスのみんなは少しずつざわざわし始めたが、私は急に視線を感じ、視線の先を見ると同じクラスの鈴木佳奈ちゃんが私を睨んでいた。

私はその眼を見て、怖くなってすぐ視線を戻したがまだ睨まれているようで視線を感じた。

さっきのたった数分の出来事で色々な事があり過ぎて頭の中がパニックを起こしていた。

でもいつも舌打ちしてたのに急にしなくなるとこんなにも驚くことに気がついた。

舌打ちなんてされない方がいいに決まっているのにそれが逆に無いと調子が狂うというか気になってしまう…。

そんな事を考えていたら「ガラッ」とドアが開いて先生が授業のため入ってきた。



授業を聞きながら私は昨日から高橋くんがおかしいと思っていた。この間くじ引きをしてからいつもと変わった気がする。

そして加藤くんのあの表情や行動も少し気になった。

それとどうして(鈴木)佳奈ちゃんがあんなに私を睨んでいたのか気になった。

私そんなに佳奈ちゃんと接した事なかったと思うし恨まれるようなことしたかな?と疑問に思った。

そんな事をずっと考えていたらいつの間に時間がきて授業が終わった。

私は、いつものように小説を読みに図書室に行き、昨日の続きの小説を手に取って読んでいた。

30分程読んでいると急に話しかけられた。

「佐々木さん隣いいかな?」

いつもなら、自分の名前を言う人も隣に座ってくる人も居ないので、驚きながら顔を上げるとそこには加藤くんが立っていた。

「えっ?加藤くんどうしたの?」

私はまさか話しかけてきた相手が加藤くんだったとは思いもしなかったのでまた驚いてしまった。

「あはは。佐々木さん驚きすぎだよ。そこまで驚かれると俺が宇宙人みたいじゃん。」

加藤くんは笑いながらそう話してきたが、私は我に返り怖くなって謝った。

「ご、ごめんなさい。いつも私に話しかけてくる人居ないから驚いてしまって」

そう謝ると加藤くんが優しい表情で応えた。

「ううん。謝らないで。佐々木さんが読んでいるところに急に話しかけちゃったから驚くのも無理ないよね。俺こそ驚かせちゃってごめんね」

加藤くんのその言葉になんて優しい人なんだろうと思った。今まで高橋くん達と一緒に居たから、怖い人だったりいじめてくる人だと一括りにしてしまっていたが、よく考えると一度でも加藤くんに何かされたり言われた事がなかった。

私はそれに気づくと何故だか勝手に涙が出てきてしまった。

その様子を加藤くんが見ていて焦りだした。

「えっ!さ、佐々木さん!大丈夫?俺、何かした?怖かった?」

私は「違うよ」と首を振り涙を止めようとした。しかし、止めようとすると更に止まらなくなりその場から離れようと立とうとした時だった。

『ギュッ』

急に視界も体制も何もかもが変わった。

気がつくと私は加藤くんに抱きしめられていた。

私は驚いたが加藤くんの優しさや温かさ、優しい香りに甘えてしまった。

加藤くんは私が落ち着くまで黙って優しく背中をさすってくれていた。

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