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「その代わりと言ったら何だけど、たまに遠くに取材することもあってね。そこに同行をお願いする事もあるから、その時は一緒に来てください。もちろん、給料とは別で交通費と出張代は出すのでご心配なく。」


こ…好条件過ぎる…!どこでこのバイトを見つけたのかなんて、既にどうでも良くなっていた。


今の私にとって、大事なのはお金だ。


「で、どうする?僕の元で働くかい?」


16歳の女子高生でも、このバイトが普通ではないことは薄々感じていたが、それ以上に仕事内容と給料が魅力的だった。


少し悩む素振りをして見せたものの、澪の答えは既に決まっていた。


「はいっ!よろしくお願いします!」


元気に立ち上がってお辞儀をする澪を、九十九は満足そうに見つめながら、


「いやー!助かるよ!これで僕の仕事も楽になる。」


そう言えば、私はここでどんな仕事が行われているのか全く聞いてなかった。


「今更なんですけど…。九十九さんは、ここでどんな仕事をしてるんですか?」


「うーん。簡単に言うと、除霊やお祓い。あと都市伝説や不思議な話を本にしたりとか。僕は憑き物付きの家系でね、除霊と言うよりも、僕の体に移動させるって感じだからしんどくて。」


九十九は澪に背を向けると、わざとらしく肩を回して見せた。


この男、どこまで本当でどこまでが嘘なのかわからない。


「除霊とかお祓いって、神主さんとか住職さんがやるようなのですか?」


「いいや、僕の除霊はちょっと変わっててね。蹴り飛ばすこともあるんだけど…暴力は苦手なんだよ。だから、基本的には話を聞いて解決する。」


蹴り飛ばす…?霊を?おばけの話を聞く…?この男はあれか、お金持ちの御曹司かなんかで、お金はあるけど頭にアルミホイルを巻いてるタイプのヤバい人間なんだろうか。


そんな疑問が頭の中を駆け巡った。


「あ。今、こいつ何言ってんだ?って思ったでしょ。まぁ、いいんだけどさ、とりあえず君は僕の話を聞いてお金を稼ぐ。そうしてもらう事で、僕は体が楽になる。お互いwin-winの関係ってやつだね。」


「私が話を聞くと、九十九さんの体が楽になるんですか?」


「まぁ。結果的にそうなるってだけだよ。こんな仕事をしてると、誰とも話さず1ヶ月以上過ぎてたなんてのもザラにあるからね。それで?いつから来れそう?」


きっとこれ以上聞いても、私が知りたい答えは返ってこないのだろう。いつの間にか安楽椅子に座って、本をアイマスク代わりにして今にも寝そうだし…。


「明日からでも大丈夫です。」


「じゃあ取り敢えず、詳しいことは明日にでも話そう。今日はもう遅い。」


どうやら、これで面接は終わりらしい。

私はそのまま九十九さんに一礼し、部屋の外に出るとパトカーのサイレンが遠くで鳴り響いていた。


まるで私に向けて、警鐘を鳴らすかのように。

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