怪異に好かれる女

@koko0

私は怪異に好かれる

私はソレらが幼い時から見えていた。だけどソレらが人では無いことを知ったのは、それらが普通ではないと知ったのは──小学生だったと記憶している。テレビでとかで語られるソレらは確かに姿は少し似ているものの、ただ醜く怖い形容とでしか語られないのが不思議であった。


アレは美しいものだ。少なくともそう表現できてしまうものだ。だけど美しいものに棘があると言う。その通りだと感じた。ソレらは恐ろしいものでは無い。ただ、美しいだけ。でも。美しさは美し過ぎると狂気になる。そう思うとそのような反応になるのは理解できる部分はあるかも知れないけれどでも、それは余りにも馬鹿馬鹿しいと思えてしまう。それは私が勝手に思っているだけなのだから心に留めておくのだけれどね。


自分の部屋の窓を少し開ける。そっと触れる様に柔らかで透き通る風の匂いは、あの事件からずっと時が止まったかの様な生臭い鉄のものだった。普通ならそんなことはありえないのだけれど、それはもう仕方の無い事。あれから全てが変わった。それだけの事。


「昴。おはよう。今日もいい匂い。好き。愛してるの昴」


綺麗に透き通る声。まるで心地よい風が吹いているみたいに耳元に流れ込んでくる。あの事件から彼女は付いてくる。と言うか愛されている。私が振り向く前に抱きしめてきた。ふわりと軽い体。それらは普通では存在しない軽さ。人間ではないからこそ、生きているものでは無いからこそ存在する軽さ。それが私を包むように抱きしめる。人間と同じ温度を感じさせる温かさ。滑らかな肌。少し不健康に感じさせる肌の色。全てが見てきた中でも、触れてきた中でも、とても綺麗で何より何処までも暖かくドロドロとして離れない。


彼女が抱き締めるのをやめて私の前に姿を現すと、彼女は私の顔をのぞき込むように微笑みながら真っ直ぐと見つめる。あの時からずっと彼女はこう質問をする。


「昴はワタクシの事好きよね?」


だから私はいつも、


「誰よりも愛してるよ」


そう答える事にしている。

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