第42話 悩み事

今のところ、カガミ様も現れることはなく……藍さんからみんなで逃げるという報告もまだ来ていない状況下で、私は一人のんびりとベットに潜り寝ていた。

今は多分お昼くらい。

昼食食べてからどれくらいの時間がたったのかわからないけどとりあえず歩いて疲れたから眠くなって今こうなってるんだと思う。

とにかく眠いんだよ私は……


このまま夕食まで眠ってしまおう。

私は深く眠りについた。


「麻実ちゃん、夕食だよ~。……って、寝てるじゃないか……。ふふ」

おばあちゃんの声が聞こえた。

どうやら本当に夕食まで眠ってしまっていたらしい。いっぱい寝たからなのか満足感がすごい。


……あぁ、よく寝た。


私は大きく伸びをすると、ベットから降りて少し早足でみんなのもとへ向かった。


いつも疲れていない私の体も、寝ていて全く動いていなかったからか、今日はなんだから体が重く感じる。

その時、視界の端にうつった藍さんを私の瞳がとらえた。

なんだか落ち込んでいるような、悲しい表情。

……何かあったのかもしれない。

そう思う前に私の足は真っ先に藍さんのもとへ向かっていた。

「どう……したんですか?」

今にも「はぁ」と大きなため息をついてしまいそうな藍さんは私の存在を認識すると、「うわ……っ⁉」と驚いた声を上げた。

「な……ななんですか……?」

あきらかに動揺したそぶりを見せる藍さんは私はから目をそらしながらそう言った。

……確実に何かを隠している。

「なんか悩み事でもあるんですか? 聞くだけなら私にも……」

「だ、大丈夫です……! すみません!」

藍さんはそうはっきり断ると、その場から駆け足で去っていった。


あんなに動揺した藍さん初めて見たかもしれない……。

あきらかに何か隠してたし……なんか不安そうな表情してた。……いったい何が? 

ちょっと私はまで不安になってくる。

これはまたあとで問い詰めなきゃ……。


「麻実、寝てたのか? 眠そうな顔をしてるが……」

お父さんが私の様子を見て察したのか私にそう問いかける。

流石お父さん、家族なだけある。……小さな変化にもすぐ気づくのはやっぱり家族だなぁ……。

「あぁ、うん。なんか疲れてて……」

私は苦笑いしながらそう答えて数人しか座っていない食卓の椅子に座った。

「そうか……。まぁ休むのも大切だな」

お父さんは私に優しく微笑んだ。

私の周りの人たちはみんな微笑む姿が頼もしくて助けになる。私はほかの人よりも恵まれてるのかも。

なんて幸せな感情に浸っていると、使用人さんが食事を持って来た。


そして昼食が終わると、いつも通り藍さんが部屋に来ていた。

「……藍さん、今日不安そうな顔をしていたのはなんでですか?」

私は早速今日のことを詳しく問い詰めることにした。

ちょっと話しにくいかもしれないからやめた方がいいかなとは思ったけどやっぱり気になるから……。

なんて変な理由で問い詰める私はひどい人かな。……紗矢や藍さんとは違って。

「あぁ……、どうしても……言わなきゃダメですか?」

「やっぱ気になるので……」

「そう……ですよね。……実は……ちょっと……不安なことがありまして……」

そう不安そうな表情を浮かべながら話そうとする藍さんに私は興味津々にうなずく。

「あの~……みんなで逃げる作戦……なんですけどね。……あれ、もしかしたらうまくいかないかもしれなくて……」

「……え、どうしてですか?」

私は思わず声を漏らすと藍さんは少し笑って答えた。

「私の家に……家族が戻ってきてしまうみたいで……」

「家族?」

「……はい。そうです。……タイミング悪すぎますよね。……でも……何とか乗り切らないと作戦立てた意味全くないですからね……」

「そうなんですか……まぁ、家族のいる中で私たちがいたら「何事……?」ってなっちゃいますものね」

私は少し笑いながら言った。

「まぁ……日付を変えるっていうのも手なんですがそれはさすがに遅すぎて手遅れになってしまう可能性がありますので……」

「……確かに。いつ何が起こるかはわかりませんからね」

私は感心したようにうなずくと、少し考えるようなそぶりを見せた。


やっぱり家族のいるときに帰るのはみんな動揺してしまうからいけないし…絶対におかしな方向に進んでしまう可能性があるから……。多分、いろいろ言われちゃうよね……。藍さんを巻き込むのだけは極力避けておきたいんだけど……。


「じゃあ……どうしますか?」

私は自分で考えるだけじゃ何のためにもならないなと思い藍さんにそう聞いた。

「……う~ん……あ~、まぁ……自分で後から考えます。……なので気にしないでください」

藍さんは苦笑いしながら首を横に振った。

「そう……ですか」

……まぁ、私が考えてもあんまりためになんないから藍さん一人の方が手っ取り早いもんか。

「すみません……」

私が元気のない返事を返したからか、藍さんは申し訳なさそうに頭を下げて謝った。

「藍さんが謝る理由なんてないですよ……! 気にしないでください!」

こんなやり取りもなんか懐かしく感じてしまう。

やっぱり藍さんは礼儀ってものを忘れないいい人なんだなぁと改めて思う。

「そうですか……なら……よかったです」

「……はい」

「じゃあ私、仕事に戻りますのでここで失礼します」

そして藍さんが深く頭を下げ部屋を出て行った。


なんだか今日はほんといつもより藍さんの元気がなかったような……

気のせい……なのかな。

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