神は不気味に笑う
第31話 一人の犠牲者
ほんとに……カガミ様の二人目がいたりするのかな?
そんなことを考えながら私はむくっとベットから起き上がる。
……もう朝。
「……お母さん、おはよう」
朝にしては、私の頭はやけによく回っていた。いつもなら何も考えられないくらいぼーっとしてるのに。
……あんまり寝れなかったのかも。それにしては眠くないけど。それ気にしてるとキリないからね。
「おはよう麻実」
「……あ、そうだ。お母さん……カガミ様のこと……」
私は頭が回っているうちに、とお母さんにカガミ様のことについて聞くことにした。
「……何?」
お屋敷の時のように怒りはしないみたいだ。
「あの……さ。お母さんが会ったカガミ様ってあんな感じだった……?」
「……カガミ様……。あぁ……、私があったカガミ様は~……もう少し大人びていた気がするわ。……若返ったのかもしれないわね」
「……ふふ。そんなわけないじゃん」
私はお母さんの言っていることがおかしくて、少し笑ってしまった。
若返るなんて、今はカガミ様は子供になっている……って言ってるようなものじゃない。大体カガミ様、自分で大人だって言ってたし。
……それはないんじゃないかなぁ。
私は一人考えを広げていると、お母さんがこんなことを言い出した。
「……私が出会ったカガミ様はもっとおとなしくて控えめで、願いをかなえてくれたのよ。……私のいろんなことをお願いしたわねぇ」
「……願い事?」
「そう。カガミ様はなんの願いでもかなえてくれる優しい人だったわ」
お母さんがその時のことを思い出すように言った。
……優しいカガミ様って言うのは全然イメージわかないんだけどなぁ。
「優しい人……ねぇ。なんでも願いをかなえてくれるんだ。……例えば?」
「……あ~……それはあんまり言いたくないわね。……まぁ……いろいろ事情があるし……」
この様子からするとすごく変なことお願いしたに違いないんだろうな。
……まぁお母さんにもそういうことお願いするときもあるのか……なぁ。たまにおかしいところがあるから。
そういわれるとすっごい気になっちゃうけど。
「へぇ……。……あ、長々ごめんお母さん。朝ご飯できた?」
私は気づけば結構な時間がたっているということに気づいてお母さんにそう言った。
私がそういうとお母さんは「あぁ」と時計を見ながらうなずいて朝食をテーブルに持って来た。
「いただきまーす」
「おっはよ~麻実ー! 今日も天気良いね~」
紗矢が私の背中をバシンと叩く。
……今日も相変わらずテンション高い。まぁこのテンションがすこし支えになってるって言うのは口が裂けても言えない……。恥ずかしいから……。
「……おはよう紗矢」
「うん、おはよ!」
そして教室につき、紗矢が勢いよくドアを開け、「おはようございます先生~」と言おうとしたのだろう。
教室の光景を目にしてそれを言いかけやめた。
……みんながみんな先生の座っていないデスクを見つめ、何やらひそひそと話し込んでいたのだ。
この状況からわかるのは、先生に何かがあったってこと。
「……どうしたんだろ」
紗矢が不安そうにつぶやく。
「何かあったんだよね。先生に……」
「……うん、そうみたい」
紗矢は深刻そうにうなずくと、みんなの見つめるデスクに近づこうとする。
すると紗矢がみんなのもとに行く前にキーンコーンカーンコーンとチャイムの音が聞こえて、みんな席についていく。
「……あ。聞こうと思ったのに……」
紗矢はがっくりと肩を落とした。
「まぁ、席つこっか」
私は紗矢の肩をポンとたたくと、それぞれの席に戻って荷物を片付ける。
そしてしばらく待った後、ほかのクラスの担任である女の先生が教室の扉を開けて入ってきた。
高校生になったばかりで先生のことはあまり知らないけど、ほかのクラスにいる先生だということはすぐにわかった。よく廊下ですれ違う先生だから。
私の担任の先生は、今日いない。少し寂しい気持ちもあったけど、たぶん風邪でもひいたんだろう。あの先生よく風邪ひくからなぁ。
なんてことを一人考えていると、女の先生は真剣な顔で、こういった。
「……残念なお知らせですが……松本先生は今朝、原因不明の病気により命を落としました」
動きが、一瞬にして固まる。
聞いたことのある死に方だった。
一人目の犠牲者が……出た。
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