第9話 本当に…?

私は、目をとじた。

カガミ様を呼ぶためだ。


私はカガミ様はいるんだ、と心に言い聞かせる。


でも実際ああいってたわけだし信じないわけにもいかないのだ。

……カガミ様、どうか姿を現してください。

私は気持ちを込めて、手を合わせながら言った。

昔の人がカガミ様を祭っていた時のように、カガミ様に願うようにして。

すると、一瞬視界がフェードアウトするように、ゆっくりと暗くなってゆく。


そして私の目がはっきり見えたころ、目の前には小さな女の子がいた。

「……え?」

私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「あなた? 私を呼び出したのは……。今はティータイム中ですのよ。失礼極まりないですわ!」

そういってビシッと私の方を指さした。

ドレス姿でお嬢様口調の女の子はすごく小さくて身長は小学生くらいだろう。

「……だれ?」

「……だ、誰とはどういうことですの? あなたが呼び出したのでしょう? それとも私に殺されたいんですの?」

女の子は動揺したような言葉を返す。

小さい容姿をしていてとんでもないことを言う。

「え……じゃあカガミ様……なんですか……!?」

私はカガミ様の意外過ぎる姿にぎょっとする。

「……ふん。何ですのその反応。私はいつでもあなたを殺せるんですのよ?」

カガミ様は見下したような目で私を見るも、それは見下しの目ではなくむしろ上目遣いだ。

「こ、殺さないでください……。……そ、それよりもあなたなんですか私にあんな夢を見せたのは……」

私はカガミ様の視線の下に行くようしゃがんで見せる。

「……あら。そうですわよ。あと私を子ども扱いしないでくださいまし? これでもあなたより年上ですのよ? とっくに大人ですわ。……そうだ、そんなことよりも私の家来との推理ゲームは楽しんでいるんですの?」

それを聞いて私は思わず立ち上がる。

年上⁉ 大人なの⁉ 10歳くらいにしか見えない……。

……ていうか推理ゲーム……?……あ、あれか……。え、あれ書いたのってカガミ様の家来なの……!?

家来……?


「推理ゲームって何なんですか?私は夢に見ただけでもうあれは関係な……」

私が「関係ない」と言おうとした瞬間、女の子が自分の指を唇に当てた。

私はそれによくわからないものを感じて自然と口がとまる。

「推理ゲームは私とのゲームですわ。どちらかが負けてどちらかが勝つ。それにあなたがみた夢は夢なんかじゃありませんのよ……? 夢だったって喜びに浸って……哀れですわねぇ……」

女の子は大人のようにニヤッと不敵に笑った。

私はその表情でふいに怒りを覚え、今にもぶちぎれてしまいそうな衝動を必死に抑えた。

だって本を書いた人は気に障るようなことはだめだって言ったから。


「……あれは夢じゃなかったのならなんで藍さんやお母さんは生きてるんですか……?」

「……さぁ。私も死んだ人間が生き返っているのは久しぶりにみますわねぇ。ただ私もずっとよくわからないんですのよ」

カガミ様は他人事のように顔を背けた。

「わ、わからないんですか?」

私がそういってカガミ様の方を見ると、カガミ様は私のことをキッとにらんだ。

私は自然と黙り込む。たぶん、カガミ様の気に障ってしまったのだろう。こういう人はプライドが高いから。

「……で、ゲームの説明に移りますわ。推理ゲーム……と言いましたわよね?このゲームは勝つか負けるか。あなたが見た夢。……まぁ夢か現実かどっちを信じるかははあなたにまかせますわ。ただ、次起こる殺人は誰が犯人なのか、ちゃんの考えるんですのよ? それでこそ推理ゲームですわ」

カガミ様はこれからが楽しみ、といわんばかりの笑顔を私に向けるとかっこよく指をさした。

悪趣味だなと思った。

でも私はふと違和感を覚える。

「……え、待ってください。次起こる殺人って……? なんでそんなこと言いきるんですか?」

「……私がすべてを操ってるから……ですわ。だからって私を犯人扱いはしないことですわね」

操っている人が犯人ではないのはよくわからない。

「操ってるのに犯人じゃないってどういうことなんですか……」

「犯人は別にいるんですわ。殺さなければ犯人じゃない……そうでしょう?……しかも私、あいにく病気にかからせることまでしかできないんですのよ。だからお師匠様には『子猫』って言われるんですの」

カガミ様は残念そうにつぶやく。

確かに子猫みたいに小さい……。

……あ、でも夢で見た殺人は他殺だった……病気なんかじゃない……だったらこれも真犯人がいるってこと?

「……カガミ様、じゃあ夢のやつはどうして……?」

「だからさっきから言ってますわよね? ほかに真犯人がいる、と。でも私が操っているのも当然なのですわ」


なんでこんなことするの……? カガミ様は守り神様なんかじゃないのかな。

本に書いてあった通りなら本当じゃなかったってことだ。


……ほんとに誰が殺したの?

これが謎が謎を呼ぶ事件……っていうのかな。


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