100歳の名探偵

鷹山トシキ

第4話

 2021年11月1日、私は千葉市中央区亥鼻いのはな町の千葉大学医学部構内にやって来た。矢作雷蔵やはぎらいぞうという教授は古くからの知り合いだ。構内には七天王塚と呼ばれる塚がある。

 牛頭天王をまつったものとされる。

 平将門の影武者は7人だったとされる。千葉というと南総里見八犬伝が有名だが数が違う。

 七天王塚には恐ろしい話が伝わる。

 千葉医大はかつて、千葉医専と呼ばれていた。ある教授がクスノキを切るように指示すると、病気で死んでしまったそうだ。枝を折った学生が自動車事故に遭ったりもした。

 東京の大手町に将門首塚がある。ビル街の特等地で、塚を移転する度に関係者が病気で倒れた。 

 七天王塚は塚が7つあるのだが、エリアを点で結ぶと北斗七星の形になる。

 


 私は研究室で矢作のウンチクを聞いていた。

「強心剤であるジギタリス製剤は、ジギタリスの葉から得られる植物由来の生薬だ。動物由来の生薬では止血目的で使用されるゼラチンや軟膏の基剤になる精製ラノリンなどがある」

 矢作は新薬の試験を私に見せてくれていた。

 新薬は、非臨床試験(動物)から臨床試験(ヒト)を通過しなければいけない。

『ガルボーイ』というロシア語で水色を意味するハデスウイルスに対抗する薬を開発していた。ハデスウィルスは誕生年によって症状が違う。1961年ならゾンビ、1962年ならゴーレムになる。

 新薬候補の物質が決定すると、マウスやラットを用いた非臨床試験が行われる。

 第Ⅰ相試験は、ヒトに初めて投与する試験であり、通常は健常成人男性を対象に行われる。ただし、抗がん剤や免疫抑制剤などの毒性が強く現れる薬剤は患者を対象に処方される。

 第Ⅱ相試験は、第Ⅰ相試験より得られたデータをもとにして、試験薬の有効性が期待される少数の患者を対象にして行われる。患者に適応する治療効果の探索を行い、用量や用法を決定することが主目的だ。

 第Ⅲ相試験では、第Ⅱ相試験までに得られた薬剤の適応症や患者対照群での薬剤の有効性および安全性の成績を検証し、有効性が期待される疾患を有する患者を対象に行われる。

 これらの試験を通過すると、承認審査が行われ、最終的に厚生労働大臣から薬価収載が認められ、医療用医薬品として処方が可能になる。

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100歳の名探偵 鷹山トシキ @1982

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