男と女の未来への話

@5454goshigoshi

第1話 未来のこと

時は2XXX年、場所は雑居ビルの中、女が一人寝ていた。寝ていたというよりもうつ伏せになってボーッとしていた。


彼女以外には誰もいない。彼女の思考は暇だと言う事しか考えていなかった。


「あーーーっ」

女はデタラメに声を出した。一ヶ月ぶりの発声だった。


しかしそこには分かりきっていたはずの孤独が残るだけだった。静寂が彼女を襲い、また、彼女もいつも通り昔のことを考えて自分を慰めようとしていた。


緩やかな死、それに抗えず、ただ従うしかない現実も見飽きていた。


しかし、今日はどうにも腹が減る。このままではおかしくなりそうだ。意を決して彼女は自分の身をはね起こしー


ガァーン







なんの音?後ろから音がした?


バッと振り返る


そこには今までなかったはずの大きな機械があった。


なぜ?どういうこと?


久しぶりに頭がビックリしている気がした。

れをよくよく観察してみる。恐怖心なんてものはもう捨てられていた私には怖いものなんてない。


側面には20XX年、未来へと書かれている。


これは…コールドスリープか?


おそらくこの中にはコールドスリープされた人間が入っているのだろう。更によく見るとキリスト教のマークが刻まれている。


…開けてみるしかないか。突然出てきたのは不気味だし、どんなやつが入っているかは分からない。


しかも開けるのに失敗したら二度と開かなくなってしまうかもしれない。


しかし、このまま開けないと自分の人生が糞ってことははっきりとわかる。大丈夫、私ならできるはず。きっとできるー。



ーピッピッ、ピッピッ、よし、順調だよね。しかし少しでもしくじればこの中のやつは一生会えなくなってしまう


ーピッピッ、ピッピッ、それに空いたとしてもそいつも言葉が喋れなくなってるのかもしれない


ーピッピッ、ピッピッ、いや生きているのかすら分からない


ーピッ、それでも


ーピッ、もしかしたら…


ー私を…


プシュー 




開いた。中にいたのは少年だった。おそらく私と同じ日本人だ。


「うわぁ、誰ですかあなたは!あれ、ここ   は?今どこにいるんだ?」


「…どうして泣いてるんですか?」


どうやら初対面の子にひどい顔を晒しているようだ。







「あの、大丈夫ですか?」


「ああ、心配かけて申し訳ない。なんだか感情が止まらなくて」


「…あの、今って何年ですかね」


「今?2xxx年だよ」


鼻をかみながら私は答える。


「良かった、成功してる」


「あぁ時が来るまで見えなくなるタイプだったのか。それにしてもなぜ君のような子供が?」

まだ鼻水は止まらない。


「あぁ、それは…それは……」


歯切れが悪くなった。


「…すみません。わからなくなってしまいました。さっきまで全部覚えていたはずなのに…」


なぜ、なぜ?と彼は呟き続けている。今にも泣き出しそうだ。


仕方がない、せっかく未来まで任務を果たすために眠っていたのにいざ起きれば何も覚えていなくて任務も遂行できない。


流石に可哀想だな。励まそう。


「まぁ、そういう日もあるよ」


どんなもんだろうか


「…それって励ましですか?」


どうやら伝わっていないようだ。


「すまない、人と話すのは久しぶりなんだ。」


「?どうかしていたんだですか?」


「あぁ、そうか、知らないのか。いや知らなくて当たり前なんだけど。」

「何かが起きたのですか?」


「いや、なに、そのなんだ」


次は私の歯切れが悪くなってしまう。


「今から200年前、人類は言語を失ったんだ。」

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