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「あら?もうこんな時間なのね。朱莉ちゃーん?」


 私を呼ぶ声がキッチンからしました。


「はい、なんでしょうか?」


「私は家に帰って料理作らないといけないんだけど、ご飯はどうするの?」


 冬樹くんが食べたお粥の皿を洗い終えた由紀さんがキッチンから出てくると、リビングの壁にかけられた時計を見て、そう言いました。


「夕食に関しては、これからコンビニかスーパーにでも買いに出掛けようかと思っています。」


「あの料理の感じだとコンビニとかに行って買ってきちゃうのかしら。」


「はい。そうなりますね。」


「うーん。流石にそれはいけないわよねぇ。かと言ってうちに招待……って訳にも行かないし……。」


「い、いいですよ。私のことは、気にしなくても大丈夫ですから。」


「そうだ!優一さんと紗希をここに呼ぶわね。4人で食べましょう。」


「えっ?」


「コンビニのお弁当を一人で食べるより、出来立てのご飯を大人数で食べた方がいいわ。ちょっと待っててね、今2人に連絡入れてくるから。」


 言うが早いか、由紀さんは廊下に出て行って電話をかけ始めました。


 少しすると、心なしか嬉しそうな由紀さんが戻ってきました。


「2人とも来れるって言ってたわ。後日、冬樹君には私から説明するから、ちょっと買い物行ってくるわね。」


 すると、由紀さんは荷物を取ってきて玄関に向かおうとしました。


「私も行きましょうか?」


「朱莉ちゃんは冬樹君のことを見ててあげて。私は大丈夫だから、ね?」


「はい、分かりました。」


「朱莉ちゃんか冬樹くんに何かあったら、必ず連絡してね。」


 そう言うと、私が返事をする間もなくそのまま靴を履いて出て行ってしまったのでした。









『〜♪』


 由紀さんが出て行ってから30分ほど経った頃でしょうか。インターホンから、来客を知らせる音が響きました。


「はい。」


『戻ったわよ〜。』


 インターホン越しに聞こえてくるのは、由紀さんの声。すぐに玄関へ行って鍵を開けると、そこには紗希ちゃんと優一さんの姿もありました。


「こんにちは!」


 由紀さんが入ってきた後ろから、元気の良い声で現れたのは紗希ちゃん。


「こんにちは、紗希ちゃん。」


 紗希ちゃんが先に上がると、最後には、


「こんにちは。三人で押しかけてしまってすまないね。つまらないものだけど、これを。手土産だよ。」


 と、ニコニコとした笑顔を崩さない優一さんが、何かが入った紙袋を持って、最後に入ってきました。


「こんにちは、優一さん。お手土産、ありがとうございます。」


「いやいや。こちらこそ、3人で勝手にお邪魔してすまないね。」


「いえ、私は大丈夫ですよ。むしろ私なんかのことを気にかけていただいて本当に感謝しています。」


「そうかい?そう思ってくれて良かったよ。」


 私は三人を居間に通して、由紀さんとキッチンに入ります。


「さて。久しぶりに4人分の料理が作れるわ!頑張るわよ!」


 そして、持っていた袋から食材を取り出して並べる由紀さん。


「できるだけ私もお手伝いしますね。」


「ありがとね。……あとね、フライパンとか調味料類、どこにあるのか教えてくれない?ウチとは勝手が違って分からないの。」


「私もそこまで詳しくはないのですが……。器具だったら、たしかこの辺の収納にあったはずです。」


 私は、一度だけ調理器具類を触った日のことを思い出して、戸を開けます。あれ以来触ることのなくなった器具を、また見る日が来るとは、


「ありました。ここです。」


「ありがとう。やっぱり冬樹君が料理してるのね。」


「はい。料理はどうしても苦手で……。料理に関係すること以外なら、分担という形で家事もさせていただいているのですけど……。」


 ……洗濯物を干したりたたんだり、掃除機をかけたりと、それも少しくらいですけれど。


「そうねぇ…‥不器用ってわけじゃないんだろうけど、どうしてかしら。」


「どうなんでしょう……。」


 ただ一つ言えることは。冬樹くんがすごいということだけ。毎日、あんな食事を作って食卓に並べることが、どれだけ大変か。本当に頭が上がりません。


「大丈夫よ。私だって料理はそんなに得意じゃなかったもの。というか、この間もらった冬樹くんの料理も、私のより上手に出来ていて美味しかったし。いつかはあれくらい完璧にできるようになりたいものね。」









「「「「いただきます。」」」」


 箸を伸ばして、鮭の照り焼きに手をつけます。


「どう?」


「美味しいです!冬樹くんとはまたちょっと違う味というか……、なんて言えばいいのか分かりませんけれど……この味も、とても好きです。」


「よかったねママ。好きって言ってもらえて。」


「ありがとね、朱莉ちゃん。」


「い、いえ……。」


 おしゃべりをしながらの食事というのは、冬樹くんとの食事と少し違って、また別の楽しさがあったのでした。






 ———後書き————

 どうも、本当に本当に、お久しぶりです。前回の投稿から、一ヶ月以上ぶりとなってしまいましたが、実は八月中ずっと、僕は病気で、仕事も休暇をいただいておりました。僕の大得意なサボり病ではなくて、マジの方でです。熱が出ていた間は意識はほとんどなかったですが、結構長いこと寝込んでいたようです。コロナかもしれないなと病院に行ったら違いましたが、それでも結構キツかったです。今は、取り敢えず全治したことになっているので、これからまた頑張ろうと思っております。体力がすごく落ちているんですが、なにか運動したほうがいいんでしょうか……?まあそんなこと、どうでもいいですね。

 では、病み上がりのしろいろ。でした。

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