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 朝目が覚めた後に、いつも通りに起き上がる。だが、いつも通りなのはここまでだった。


「……っ。」


 まず第一に、まっすぐ歩くことができない。体は鉛のように重く、節々は痛みで歩くことも苦痛だった。喉は痛みで喋ることもかなりきつかった。


 熱があるのだろうかと思った俺は、体温計で体温計測をするため、すぐにリビングへ向かう。


この間買った箪笥から体温計を取り出し、脇に挟む。


『ピピピピピピピピッ、ピピピピピピピピッ、ピピピピピピピピッ』


 体温計が示した温度は、37.7℃。俺は平熱が低く、35℃くらいになっている。普通の人なら微熱で済まされる程度でも、だいぶきついのだ。


 昨日、雨に打たれたのが原因だろうか、悪寒もする。


 俺はマスクを探し出し自分につけてから、朱莉の部屋のドアをノックする。


「は、はいるぞ……。」


 部屋の電気をつけると、彼女は目が覚めたのか、起き上がって俺を見た。


「ん……?どおした、ですか……?」


 寝惚け眼を擦って起き上がる朱莉。喉の痛みを我慢しながら、彼女に伝える。


「なんえますくしてるんです?」


 下がうまく回らないようで、あくびを噛み殺しながら彼女は言った。


「多分……、風邪だ。食事は、俺が金を出すから、ご飯は買って食べるようにしてくれ。金はリビングに置いてある。3日分だ。洗濯物、は、ゲホッ!……溜めておいてもいい。元気になった時に、俺が全て片付ける。」


 ゆっくりと、喉の痛みを我慢しながら朱莉にそう告げる。


「え……?は、はい。分かりました。」


 未だよく分かっていないようだが、俺は話しながらドアまで歩いていく。


「そうか。それは良かった。すまん、朝はレンジで昨日のものを温めて食べてくれ。俺は叔父上に連絡を入れたらその後をどうするか自分で決める。」


 そして、じゃあ、と言って俺はドアを閉める。


 俺は自室に戻り、スマホを探し出して叔父上にメッセージを送る。


『申し訳ありません。熱が出ました。』


 俺がメッセージを送ると、少ししてからメッセージが返ってくる。


『学校へは私から連絡を入れておくから、きちんと休みなさい。』


 叔父上はそう送ってきて、


『きちんと休むんだぞ。分かったな?』


 と、間髪入れずに追撃が来る。

 

『了解しました。連絡よろしくお願いします。』


『任せておけ。それともう一ついいか。病院は1人で行けるのか?』


『時間はかかると思いますが、多分大丈夫です。』


『駄目なら由紀さんが一緒に行くと言ってるぞ。どうする?』


 迷惑はかけたくないが、病院に行くまでに倒れてしまったりする方がよっぽど迷惑だろう。そう思った俺は素直にお願いすることにした。


『すみません。お願いしてもらってもいいですか。』


『了解したと言っている。合鍵は持っているようだから、それまで寝て待っていなさい。』


 もう返信するのも辛くなってきたので、スマホを机の上に置いてベッドに潜り込んだのだった。








「あら?冬樹君は?」


 朝のホームルーム直後、美晴ちゃんが私のところまで来てそう尋ねてきました。


「風邪だと連絡をいただいたんですよ。休むと教えてもらいました。」


 冬樹くんは、一緒に住んでいることを知られたくないことは分かっていますので、朝に連絡をもらったというふうに変えて教えてあげます。


「そうなのね……。昨日の雨で濡れちゃったのかしら。用意周到な冬樹君のことだから折り畳み傘くらい持っていると思ったのだけど。」


 と、少しにやにやしながら私を見て、そう呟きました。


「……分かりませんね。」


 いいえ知っていますとも。私が一緒に入りましたからね。冬樹くん、濡れてましたからね。


「でも、下校時間あたりは、雨はそんなにひどくなかったじゃない?その後の時間の方が酷かった記憶があるんだけどな?」


 はい、そうです。風が酷い中で傘が壊れたとかで、髪もなにもかもびしょびしょで帰ってきましたよ。びちょびちょの服が肌にくっついていて、なんだかまだ年齢的に見てはいけないもののような気がしてしまったので、すぐお風呂に入れました。


「それ以上のことは私に聞かれても困りますよ。」


「そうね、これ以上のことを知ってるとなると、ストーカーとか同棲とか疑っちゃうわよね?」


 ああ、美晴ちゃんは今、私で遊ぼうとしているのですね。冬樹くんと一緒に住んでいることがバレないように考えを巡らせる私で。


 やられっぱなしは癪ですし。ちょっと私もからかってみましょうか。


「そういえばこの前、隼人くんの誕じょふぐっ!?」


「それ以上は言ったらダメ。本当にダメ。とにかくダメ。」


 私の口を塞ぎ、周りを見渡す美晴ちゃん。実は、五月初めの隼人くんの誕生日に向けて、誕生日プレゼントをどうすればいいか、私にも聞いてきていたのです。その話題を思い出したから、さっきトイレに行くために隼人くんが教室を出て行ったタイミングで、この話題を振ったのです。


 そして周りを見渡しても隼人君がいない事を確認してから、私の口は解放されました。


少しだけでもやり返しができてスッキリした私でした。






 ————後書き————

 どうも。急に降ってきた仕事が予想以上に大きく、そして多かった為に一週間以上も投稿しなかった、しろいろ。です。申し訳ありませんでした。

 昨日は、ワクチン2回目打ってきました。現段階での熱は38.6℃です。あたまいたいです。まだやることがあるので、まだ寝られません……。

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