ギンコ・ビローバの約束
抹茶塩
1
高々とそびえる巨木が守り神のように女を見下ろしている。
目の前のそれは、記憶の中のそれよりも幾分か小さい。
女がいるのは公園である。
遠くのほうで子供のはしゃぐ声が聞こえる。
つられて、振り返ると黄色の絨毯が地面を埋め尽くしている。
黄色い小さな扇が折り重なって、一面クレヨンで塗りつぶしてしまったかのようだった。
かがんで、そおっと一つ。扇を掴む。
くるくると指先で回すと、羽を広げた蝶々のようで、くすりと笑みがこぼれる。
すうと、鼻から息を吸う。思わず鼻をつまみたくなるようなにおいがした。
7年ぶりの刺激に、こんなものだったかしら、と女は思う。
「あ」
ひゅうとさす北風が頬を撫でて、つかんだ扇を連れて行ってしまった。
冷たい空気の流れが目に染みて、思わず瞳を閉じると、脳裏に浮かぶのは彼女のこと。
忘れがたい思い出。
忘れがたい想い。
忘れがたい、この大樹の下で交わした、約束。
「もしどっちかが死んじゃったらさ、この木をお墓にしよう!」
無邪気な、どうしようもない、息の詰まるような少女だったころの、ユメの名残。
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