熱く燃える

 一体何時間戦っている!? まだ2階層だぞ! 斧の切れ味が油で落ち始めている。お嬢ちゃんの意識もまだ戻らねぇ!


 「キリがないですね。2階層の怪物がこれほどまで活発化しているとは、私の読みが外れたようです」

 「黙って戦え…」


 三井が出す炎のおかげか防御はまだ破られていない。センチピードとウォールアイがお互いに殺し合っているのが見える。縄張り争いに発展しているようだな。

 センチピードが俺の右腕に巻き付く、口が開き、何かが放出される音が…


 「三井! 俺の腕を焼け!」


 剣先から飛び出た青い炎がセンチピードごと腕を焼く。右腕の感覚が消失、文字通り消えちまったのかもしれん。左腕に持った斧を力任せに振り下ろす。

 奴らの手足が飛び散る。ウォールアイが合体し、壁を作り始めた。"ウォール"の由来はこの特性かららしい。


 「まだまだまだまだまだか!? 強化剤をもっと寄越せ!」

 「落ち着いて下さい。あの状態のウォールアイは動きが鈍くなります。今が逃げ時です」


 壁がセンチピードを飲み込んで吸収する。斧を捨てて左腕でお嬢ちゃんを抱える。別フロアへの巨大な扉をキイルトースが拳で殴り開けた。


 「最大火力で燃やします」


 三井が扉の隙間から"壁"目掛けて剣を振る。溶岩が煮え固まったような火球が放たれ、後には何も残らなかった。


 「ハァ… ハァ… 最初からそれを使えば良かっただろ…」

 「コツを掴むのに時間が入りましてね。3階層に早く急ぎますよ」

 「回復時間をくれ… 腕を治療する……」


 お嬢ちゃんを床に下ろして回復剤をバッグから出した。患部に10秒当て、その後に中の針を注射する。無くなったのは手首から上、まあセーフだ。キイルトースは震える手で強化剤をシリンダーに打ち込んでいる。かなり無理をしていたからな。


 「手助けは要らないかい?」


 部屋にぶら下がった巨大なシャンデリアの上から影が語りかけて来た。"同業者"の登場だ。

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