第12話 親子揃って体力不足


 果たして、僕の予想は当たったらしい。

 元気なつむぐとは裏腹に、父さんはげっそりしていた。


「おかえり二人とも」

「はは…父さんも体力少しは付けないとね」

「もう、情けないなぁ!スーパーで鍛えられた母さんを見習いなさい! 」


 仰る通りである。

「君は凄いなぁ。尊敬するよ」と父さんはソファに座り、ため息を吐いた。

 程なくして、穏やかな時間を僕達は満喫するのだった。


 そうして夜を迎え、今日も作戦会議と言う名の雑談を開始した。


「学校はうまくいってんのか? 」

「父さんみたいな事言うね。まぁ、思ったより刺激的で楽しかったよ」

「ほぉ?相澤ってのは、どんな奴なんだ? 」


 そういえば昨日は結局話が進まず寝たんだっけ。


「音楽の先生だよ。楽典の話になると人が変わったように饒舌になるんだ」


 授業はまだ一回しか受けてないからまだよく分からないけど。

 多分良い人だ。話してて楽しい人なのは確かだ。

 それに音楽の話ももっと知りたい。

 

「ふぅん、音楽講師なのか。確かに散歩の時に話を聞いちゃいたが、ありゃ典型的なヲタクタイプだな」

「はは…」


 否定できなかった。

 言われてみればその通りである。

 熱意が音楽だからヲタク感があまり感じられなかったのだろうか。

 アニメやフィギュアなどに興味がない僕にとっては、現実では使わない言葉だ。


「そして布教されてめでたくヲタクの仲間入りってわけか、渉さんよぉ」


 一々鼻につく言い方をする犬だ。


「偏見が過ぎるよつむぐ。僕はただ好きな事を知りたいだけだ」

「ハッ、言い換えだけは上手い奴だ」


 追求心に従ったまでだ。

 どうせ同じ意味なら、聞こえが良いように言ってやるさ。


 そして今日も中身のない会話をして貴重な二連休は幕を閉じた。


 *


 朝のアラームで目を覚ました。

 引っ越してから二回目の登校日、月曜日がやってきた。

 ようやく本格的に学校生活の開始を実感する。

 顔を洗い、つむぐと喧嘩し、制服に着替えながらまたつむぐと喧嘩する。

 はたから見ればおかしな光景だろう。

 だが、僕にはもうこれがルーティンになろうとしていた。


 朝ご飯を食べ、学校へ向かう。

 一回行ければこっちのものだ、僕は迷子にならずにスムーズに教室に到着した。


「おはよう、渉君〜 」


 ほまれ君が挨拶をしてくれたので僕も「おはよう」と返す。

 自分の席に腰を下ろし、今日の時間割を確認する。

 やった!午後の授業に音楽がある。

 今日はどんなことを教えてくれるのだろう。

 期待に胸を膨らませ、一限目のチャイムが鳴った。

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