ー幕間ー
「行ったか……」
胸元には、最後の抱擁の熱がまだ残っている。
<
<茶番だな>
分かりきった現実に、靂は自分を笑った。いつからだったのだろう。啼義の存在が、消すのを
さりとて、逃がした啼義が無事に生き延びる保証もない。ダリュスカインが啼義の生存に気づき、追撃に向かうのは時間の問題だろう。こんな不確かなことに、長いこと追ってきた目的も、
それでも何故か、後悔はなかった。
心の何処かで、分かっていたのだ。
あんな場所で、一人泣き声を上げて自分を呼んでいた赤ん坊を、あるいは生まれ変わりのような気すらして抱き上げた日のことが、昨日のことのように思い出された。
<名に与えた"
余計な名を与えてしまったものだ。
声に出さず少し笑って、靂は踵を返した。刀を再び手に取り、鞘から抜く。刀身は抜け目なく磨かれ、曇りひとつない。こんなものを突きつけられて、啼義はよく動じなかったものだ。
それをしばらく眺めてから、迷いを断ち切るようにひと振りし、再び鞘に戻した。
そして、扉の前で片膝をつき、礼の姿勢をとっている壮年の男を振り返る。
靂は厳かに、口を開いた。
「
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