第47話 防具屋のお仕事⑪ ラメラーアーマー
「ま、ま、ま、また測るの~~~~っ!??」
ネジュリのお尻に巻き尺を巻き付けながらブレザは悲鳴を上げた。
薄布一枚だけ履いた、ぷにぷにと形の良いお尻が目と鼻の先にある。
「も、も、もう全部測ったと思うけど?」
「何言ってんの、まだまだよ? いまから作るのはワンピース水着型ラメラーアーマーなんだから」
さらに項目を増やした記入表をパシパシ叩きながらセーラが言った。
「なんなのさそれ!? そんなの聞いたことないよ!!」
「あるのよ世の中にはそんな防具が。……まあ、あれねビキニアーマーと同じ類の品物ね。一部のマニアックな防具屋でそんなのを扱っているって聞いたことがある。今回はそれをウチで作ろうってことよ」
「それでなんで、またこんなに色々測るのさ!?」
やっぱり少し頬を赤らめつつ、股間とおヘソの間あたりに巻き尺を巻く。
「水着型となるとプロポーションにピッタリ合わせないとサマにならないから、いろんな場所の形と寸法を調べる必要があるのよ」
答えながら、ブレザの反応が大人しくなったことに気がつくセーラ。
昨日までならもうそろそろ鼻血を撒き散らしてもいい頃だが、そんな気配は全然ない。
これは……少しは免疫が出来てきたかな?
と、セーラは内心ほくそ笑む。
「……えっと下腹部が86センチ」
「はい、86ね」
「おヘソの上が67センチ」
「67……と」
「オッパイの下が75センチ」
淡々と採寸が進んでいく。
その間もネジュリはずっと下着姿のままなのだが、ブレザの反応は薄いままだった。
「……………………」
なんだか寂し面白くないネジュリ。
少し悪戯にとブレザの顔が胸に近づいたタイミングを図って――――、
「えい♡」
と、ブラジャーをめくってみせた。
「――――ぐっ!??」
モロに生乳を見せられてしまったブレザは一瞬怯むが、すぐに踏ん張りギリギリで鼻血の噴出を耐えてみせる。
「あ~~ん、なんだかお姉ちゃん寂しい~~~~~~~~(泣)」
「いや、それはさすがにアウトです」
モロ乳をさらけ出して悔しがるネジュリにセーラは怒りジト目で判定を下す。
これ以上は仕事ではなく、ただの誘惑になってしまうからだ。
いまさら?
そう思わなくもないが、線引というものは重要である。
「はい。それじゃあ最後は縦胴回りを測ってちょうだい」
ネジュリのブラジャーを直しつつ、ブレザに最後の仕事を言い渡す。
「……縦胴回り??」
ブレザとネジュリが同時に聞き返した。
「縦胴回りって言うのは、こう……肩から斜めに水着のラインに合わせて股間までの一周を測るのよ。これをしないと水着がキツすぎたり、逆にユルすぎたりしてポロリしちゃうことがあるからね。一番重要なところよ」
言ってジェスチャーを交えつつ測り方を説明する。
「え……え~~っと、こうかな……」
言われた通りにネジュリの身体に巻き尺を這わせる。
肩から股間を通し、そして一周させて……。
緊張で少し力んでしまう。
と、――――ぐにゅん。
柔らかな下の秘丘が引っ張られてピンと張った下着が中の形を浮き上がらせた。
――――ぽんっ。
いい音がして破裂するブレザの鼻孔。
「わあ!! ブレザ!?」
「よし!!」
いままで我慢していたぶん、とんでもない勢いで噴出する新鮮な鼻血。
ビックリするセーラに拳を掲げるネジュリ。
最後の最後で最大の刺激を受けてしまったブレザは、あわれその場にひっくり返り意識を失うのであった。
「はい、じゃあまた明日までに仕上げておきますので、またお越し下さいね」
木札を渡しながらニコリと微笑むセーラ。
「……ブレザちゃん大丈夫かしら。まさか気を失うとは思わなかったわ」
奥の母屋に運ばれて頭を冷やされているブレザを思い、心配そうにするネジュリ。
「いいえ、大丈夫ですよアレくらい。以前なんて女性用の防具を触るのも照れちゃって逃げてたくらいですから。それと比べたらすごく進歩しましたよ。これもネジュリさんが協力してくれたおかげです、ありがとう御座いました」
「御座いましたなんて寂しいことを言うのね? ……これからもっともっと色々教えてあげてもいいのよ~~~~♡」
「アレでも一応、可愛い弟なんで……あまり過激な教育はやめて下さいね」
「うふふふふ♡ なに言ってるの? もう色々覚えてもいい年頃でしょ」
「そこまでの知識はいらないですよ、防具屋には」
「あら。でも男の子には必要なことでしょう? うふふふふふふ」
「もしかして……ブレザのこと狙ってます?」
「私は最初っから好きだったわよぉ? 可愛くて純粋な男の子って大好きなのよね~~~~♡」
まぁ、もしネアリの弟子にでもなれたのならば彼女とは毎日でも顔を合わす仲になるだろう。
なれば恋愛関係に発展する展開も無きにしもあらず。
でも、あの奥手の弟が……この痴女――――もとい、パリピ姉さんとお付き合いをするなんてちょっと考えられない。
せいぜいが遊ばれてポイされるのが落ちだろう。
ならばそうならないように私が間に入って監視していなければならない。
やれやれ……この人とは長い付き合いになりそうだ。
とセーラは密かに胸に誓い。
「うふふふふふふふふふふ」
「うふふふふふふふふふふ」
二人は静かな火花を散らしながら目線を交錯させるのであった。
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