【完結】 裏庭にハニワ、庭にハニワ、ハニワ取りがハニワになった件 ハニワの中から美少女が出てきたけどどうすれば?

愛田 猛

第1話 会社をクビになるわけがないと思ったのに

裏庭にハニワ、庭にハニワ、ハニワ取りがハニワになった件


第1話





高卒後十年勤めた工場をあっけなく首になった俺は、15年落ちのハイエースになけなしの家財道具をつめこんで、田舎の山の中で独り暮らしする祖父の家を目指していた。


住んでいた寮は追い出されたので、当面祖父の家にやっかいになるつもりだ。

そこは、俺が小学校に入る前まで過ごした家だ。山の中野一軒家で、畑があるので、祖父はそこで自給自足に近い生活をしている。一応先祖伝来の土地で、山も一部あるらしい。まあ対した財産ではなさそうだが。


麓の村にたどり着いた。村の機能はここが終点だ。俺の通った小学校、中学校もここにある。役場の建物は村、県、国の出先がある合同庁舎だ。住民票を受け付けてくれた爺さんが、他の手続きもまとめてパソコンでやってくれた。


俺はハンコを押して、書類をそれぞれの窓口に持っていくだけで済んだ。会社都合の退職なので、失業保険もすぐおりるそうだ。不幸中の幸いだ。


隣の郵便局で、郵便貯金の住所変更をする。失業保険もここに入るわけだ。


受付てくれた女性をよく見ると、小、中学校の同級生だ。肩までの長さの黒髪に、それなりに化粧した女性。清水かおり、と名札がついている。


彼女は同級生の湯川くんと結婚したと聞いたが、詮索はよそう。ちなみに指輪はない。

「羽庭くん、戻ってきたの。」彼女は言った。


俺の名は、羽庭創(はにわ そう)。28歳、無職、独身、童貞だ。


「ああ。清水さん、久しぶり。俺は山の中の爺さんの家に越してきたから、たまにしか出てこないと思うけど、これからよろしく。」


とりあえずの社交辞令だ。村での生活は人付き合いが大事だしな。まあどうせ山にこもるんだけど。


「ああ、羽庭さんのとこね。遠いよね。」彼女が言う。そう。俺の祖父の家は、ここから3時間くらい山の中に入ったところなのだ。


ぽちっと一軒家、という番組スタッフが訪問しに来たという。


ただ、うちの祖父は目立つのが嫌いなので、鉈を振り回して追いまわした。そのまま不法侵入で隣町から半日がかりで警察を呼び、テレビ局の人間は平謝りしたそうだ。

入口に、「無断侵入禁止」と書いてあったのを軽視したつけがこんなところに回る。


まあテレビの制作会社のスタッフのモラルなんてそんなものだ。また何年かしたら、同じことが繰り返されるのだろう。



俺はそのままハイエースを走らせ、何とか日が暮れる前に祖父の家にたどりついた。

連絡していないから驚くだろうな。 


そう思っていた俺が驚いた。

祖父が、布団の上で死んでいたのだ。




ちゃぶ台の上には手紙があった。

「これを羽庭創に渡すようお願いする」と。


とりあえず、俺は防災無線で役場に連絡した。

この家には電話も一応あるが、あまり使っていない。いまどき黒のダイヤル式電話なのだが。、結構調子が悪い。

携帯は基本的につながらない。


防災無線を鳴らすと、さっきの爺さんが出た。

祖父が亡くなっていたと聞くと、明日誰かをよこすから、遺体を綺麗にしてやってくれ、と言われた。俺はタオルで祖父の体を拭き、着替えさせた。


祖父は、自分の死期がわかっていたようだ。

几帳面な性格なので、家はしっかり片付いていた。


手紙を開いてみた。俺あてに、この家のものはすべてお前のものだから好きに使え、と書いてある。そして、もう一通封筒が入っていた。こちらは厳重に封をされており、『羽庭創以外閲覧禁止』と書いてある。なんだか物々しい雰囲気だ。


開けようとしたとき、庭で物音がした。


こんな所に誰も来ないはずなのに、侵入者か?と思い、庭に出てみた。


するとそこには、高さ50センチくらいの、人形のようなものがうごめいていた。

色は茶色というか土色で、手がついていて、それを上下にゆさぶっている。首はなく、ただずん胴になっていて、目、鼻、口のところに穴が開いている。そして足は一応ついていて、ちょこまかと動いている。まあ、いわゆるハニワだな。


様子府に、動くハニワだ。


ちょっとコミカルではあるが、このままでは庭や家を荒らしてしまいそうだ。

手で押しとどめようとしたが、意外に力が強い。


逆に、上下に動く手で殴られた。硬いので、結構痛い。


これはもう仕方ない。俺は、玄関にあった、獣撃退用の木刀を取り出し、ハニワの胴に叩きつけた。


ガラガラガッシャ―ン、と音がして、ハニワが崩れた。ハニワはそのまま動かなくなり、地面に陶器の小山が出来た。中は空洞だった。なぜ動いていたのだろう。


よく見ると、中にガラス細工のようなものがあた。変形した涙のような形のものだ。昔の装飾品、勾玉(まがたま)のようだ。 俺は、勾玉を拾い上げた。


と、今度は裏庭から音がした。行ってみると、やはり同じような大きさのハニワだった。

俺はそれも始末し、勾玉だけ取り出した。


このハニワ、いったいどこから…と思って庭を歩き回ってみたら、物置小屋の戸が開いていて、小屋の床に大きな穴があるのを見つけた。


その穴は階段になっていて、まるで地下道の入口のようだ。人間が一人通れるくらいの階段である。


おそらく、ハニワはこの中から出てきたんだろう。だが、どう対応していいかわからない。穴をふさぐ道具もないし、物置の戸の鍵をしめたら、逆に戸や壁が壊されそうだ。


仕方ないので放置しようとしたら、中からハニワが出てきた。

物置の中で始末し、がれきを片付ける。また勾玉だ。これで三つ目になる。



その後、おさまったようなので家に戻り、とりあえず食事にする。パン、肉、果物などを買ってきたから、とりあえずパンにする。祖父の遺体の横で、パンをかじる。


「これが本当の、祖父とパン食う」だな。」などとわけのわからないことを思う。


祖父は当然、パンを食うことはない(そりゃそうだ。死んでるし)。もし食べたら、犬のお父さんもびっくりだ。)


その後ハニワを二体撃破し、祖父の手紙をやっと開封する。


ーーーーー

新連載です。

タイトルが浮かんできて、書き始めました。

和風ダンジョンものにしようと思ったんですが…まあ良かったら読んでください。


★、ハート、コメントなどをいただけるとモチベ上がります。


うん。初速大事です。



った。


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