教官の”使命”

かつて、ある町には武道家の息子がいた。




その息子は父の部屋である魔法のやり方を知った。




『無双』の魔法。




無双という言葉は少年の心を魅了した。




しかし、その魔法は肉体に多量の負荷を与え、その身体能力を向上させるため、少年の体は耐えられず、四肢の骨が折れる重症になってしまった。




しかし、今、そのかつて『少年』だった者は…




己の成長しきった肉体を信じ、愛する生徒を守るため。




その魔法を解禁する事にした―――――――――




今朝、俺はゴリアテにある物を渡した。




「ゴリアテ、お前にこのバッジを渡すよ。」




「きょうかん、これはなんですか?」




「お前ら今日5層に行くかもしれないんだろ?そのとき、もしピンチになったとしたら、このバッジのピンの部分を回せ、そしたら俺が助けに行ってやる。」




「しんぱいしすぎだぞ、きょうかん。」




自分でも過保護だと思った。




あいつらは既に本登録を済ませ、俺と同じ探検者となっていたから本当は俺は助けなくても良いんだ。




しかし教官人生で初めて育てきれた初の生徒だったからしょうがなかった。




「仕方ないだろ?教官の”使命”なんだから、ほら、行ってこい!」




と俺はゴリアテを送り出した。




俺は今まで生徒に厳しくしすぎたからか、1度も卒所生を出したことがなかった。




そんな中で奇跡的な6人全員が残った状態での卒所だ。




大変な中付き合ってくれたこの6人を大切にしない訳が無い。




5層に始めて行くとの事だったから心配してどうしようもなかった。




そしてその昼過ぎの事だった。




ふとズボンのポケットに違和感を覚え、その違和感の正体を手に取ると、




ゴリアテに渡した片割れのバッジが振動していた。




「あいつら…何があったんだ…!!!」




気がつくと俺は無我夢中で迷宮へ向かっていた。




愛する生徒のルドー、アルト、ニア、ヴィル、カミナ、そしてゴリアテ。




この迷宮のどこかであいつらが死にかけている…もしかしたら死んでいるかもしれないと思うと、泣きたくもないのに涙が出てしまっていた。




ギルドに着いたが、入場証を書かずに俺は迷宮の中に入っていった。


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