空想上のはずの賢者

「三賢者の迷宮って呼ばれてるとこがあるが…そこか?」




三賢者の迷宮…明らかに魔法書が眠っていそうだ…詳しく話を聞いてみよう。




「三賢者の迷宮?おとぎ話には聞きましたが、実在するんですか?」




ニアが食い入るように聞く。




おとぎ話に賢者の話があるのか…父親との旅の時はそんな話は聞いたこともなかったな…




店主は少し話を思い出すように上を見ると、




「そうさ、あの迷宮はこの王国の都市、『エトレス』を三角形に取り囲むように建てられている迷宮だ、そして東にある迷宮は怒れる赤の賢者が作ったとされていて、眠っている書物の傾向は攻撃魔法だ。」




東にある、ということは赤の賢者の位が1番高いのだろうな、と思った。




昔、養成所に俺は会ったことは無いが、ギルドマスターが来た時に、教官が上座と下座をしきりに確認していたのを覚えている。




日が昇る方なのだから恐らくその賢者か一番偉いのだろう…いや、怒れる賢者だから怒って無理やりそこにしてもらったのだろうか…




「そして西にあるのが人海戦術に長けたと言われる王国の軍師の黒の賢者で、補助魔法がその迷宮に眠っている、そして北にあるのが…」




「優しく、思いやりの深い賢者であり、敬虔な神父でもあった緑の賢者…ですよね?その三賢者の迷宮のおとぎ話は祖母からも聞いています。」




ニアが話に割って入る。




「そうさ、そこに回復魔法の本が眠っている、さすが魔法使い、頭がいいね?これが私の知ってる話だ、他に聞きたいことは?」




「十分話は聞かせてもらいました、ありがとうございます。」




ニアが深々と頭を下げてお礼を言う。




「何、ただの年寄りの世間話さ、また暇になったらここに来てもいいんだよ、またね。」




俺たち3人は道具屋の店主に軽く会釈をして、その場を立ち去った。




「行く先、決まってよかったな。」


寮への帰路に着くとアルトが口を開く。






「わざわざ私のためにありがとう、ルドーも父親に会いたいのに私のわがままに付き合ってくれてありがとうね。」




今回の聞き込みで俺は空気だったのだが、感謝されるとは思っていなかったが、




「大丈夫だよ、俺の父親は生きてるか死んでるかわかんないんだし、自分の仲間の用事を優先するのが1番だろ?」




そりゃそうだ、生きてるんだか死んでるんだか分からない父親の用事は後回しでもいいだろう。




「んじゃ、帰っかぁ、ヴィルのやつ、カンカンに怒ってるだろうな。」




アルトは笑いながらに言う、怒っているヴィルを想像すると自分も笑えてくる。




そして俺たちは、寮に帰って行った。


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