《見習いの半亜人》:五大英雄②
『五大英雄』。
それは神話の世界に登場している、架空の人物であった。
はずだった。
少なくとも、今この瞬間までは。
だが、シエラの表情を見て、嘘を語っているとは思えないティルは、これを事実と信じる以外道はなかった。
今、ティルが生きている世界に、同じ世界に彼らがいるなんて。
「所でティル君はギルドに入らないのかニャ」
唐突な話題転換に戸惑う。
もう少しだけ感動に浸っていたい気もしなくはないが、考えたとことで何が分かる訳でもあるまい。
「クオーターで、しかもレベルの低い僕を入れてくれるようなギルドはありませんよ」
シエラはティルがクオーターの話題をすることを嫌う。
否、自分がクオーターであると言い、自らを傷つけるティルた対していたたまれない気持ちになるのだ。
「そんなティル君に提案があるニャ!」
普段はシエラから言動を嗜まれるティルであったが、今日のシエラは何かがおかしい。
「提案ですか」
「そうニャ!私の友達がマスターを務めているギルドがあるニャ。《エーデルシュタイン》っていう名前で、大きなギルドではないけど、君のことを話したら快く受け入れてくれるそうだニャ」
どうやら、ティルの知らない所で進められていた話に少し罪悪感を覚えての不審行動だったようだ。現に、ティルに呆れた目で見つめ続けられているシエラは冷や汗を流し、少しずつ顔を窓の方へと背けようとしている。
「僕がいない所で話が進んでいたことは一旦置いておくとして。どうして、唐突にギルドへの加入を勧めるんですか。嫌味とかじゃなくて、純粋な疑問です。確かにギルドに加入すればパーティーに参加できてリスクも減るかもしれませんけど、分け前も減りますよね」
何かと葛藤している様子を呈していてシエラであったが、遂に諦めたのか話し始めた。
「ぐ、偶然、昨日友達と話していたら君の話題になったのニャ。《エーデルシュタイン》はまだ発足して一年だけの新規ギルドで人員不足ニャ。それに私の友達は君がクオーターだろうがハーフだろう、何だろうが気にしない心の広い人ニャ。私に免じて一回だけ会って欲しいニャ」
しかし、ティルはその提案をのむことは出来ない。
「僕のせいでそのギルドに迷惑がかかります。良いお話で嬉しいのですが、お断りさせて下さい」
どうしても及び腰になってしまうティル。
それほどまでに、要塞都市に来てからの短期間で受けた扱いは酷いものであった。
「一度、会ってみるだけで良いニャ。レベルが上ったお祝いに私が食事をご馳走するニャ。その途中で話を聞いてくれるだけ、ね」
両手を合わせて頭を下げるシエラに折れたティルが不承不承ながら承諾する。
「それじゃ、狩りから帰ってきたら組合に裏口で待っててニャ。十八時までには仕事が終わると思うけど、待たせちゃったらごめんニャ」
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