第3話 やっぱりチートはダメなんだなって

――――そして二ヶ月後!



「ギブアーーーーップ!!!!」

「今度は何じゃ? 順調そうじゃったのに」


 二ヶ月だからね。俺も何とかなると思ったよ。


「いや、あの、敵の弱点がですね……」

「ほう?」

「熱とか冷気とか雷とか、そういうのはわかるんですよ。魔法を使える仲間がいれば倒せますよね?」

「うむ」

「『ビッチな女の子』ってなんなんすか?」

「何って……ビッチな女の子じゃろ? ほれ、イケイケのギャルじゃよ」

「弱点?」

「立派な弱点じゃないんか? 無理じゃった?」

「いや、そいつはレベルのゴリ押しで何とかしたんですけど」

「やるのぉ」


 褒められたのか? あんまりうれしくねーわ。


「四天王の二人目とかいう知の四天王も倒して」

「ほうほう」

「あ、そいつとは弱点クイズ勝負で勝ちました。知識チートで助かったっす」

「……何がマズかったんじゃ?」

「魔の四天王ですかね……。弱点が『魔力切れ』だったんすけど」

「ふむ?」

「MPが∞でした……」

「ほう」


 いやいや、「ほう」じゃなくてさぁ……。


「弱点が弱点になってねーじゃん!!」

「∞ってマジで?」


 何で神様もビックリしてんだよ。


「マジでマジで!」

「う~む、表示は∞でも実際は有限なんじゃないかの? あくまで表示上の∞というワケじゃな。本当はカンストがあるんじゃよ」

「そういう問題じゃねえっての!! あのさ、普通の魔法ってMP10ぐらいしか消費しねぇの! 大魔法でも50とか、そういうレベル! でも中盤になるとMP1000オーバーの敵がいるわけ! わかる!?」

「わからん……。もっとはっきり言ってもわらんと」

「カンストって、最低でも5桁近くあるってことじゃねーか!! どうやって削るんだよ!」

「いやカンストは10桁じゃけども……」

「なお悪いわ!! 絶望的じゃねーか!!」


 長い沈黙が訪れる。

 え? 何? 神様も想定外だったとか?


「これは……あれじゃな。魔神のヤツがインチキしたんじゃな。ちょいとクレームを入れてきたるわ」

「インチキ?」

「魔王軍団は人間より強くしてもいいから、ちゃんと弱点を入れることって協定で決めてたんじゃよ」


 そう言うと神様はパッと姿を消した。クレームを入れに行ったのか?

 それから一時間ぐらいして、神様はしょんぼりして戻ってくる。


「どーしたんすか?」

「言い負かされた」

「マジかよ、こいつ」


 あきれのあまり思わず本音が出てしまった。


「何で負けてんすか」

「……クレーム入れたろと思ったらな、逆に『絶対に勝てる能力』にクレーム入れられてしもうた」

「えぇ……」

「お互い様じゃとさ……」

「えっ、じゃあ魔の四天王、倒せなくないっすか?」

「『絶対に勝てる能力』で戦えば倒せるぞい」

「嫌ですよ」


 こいつ本当にどうしようもない神様だな。魔神に論破されてんじゃねーよ。しかも自業自得じゃねーか!


「しょうがないのぉ……。ほんならこっちも無限の魔力で対抗するか?」

「えっ、いいんすか?」

「あっちもやっとるんじゃから嫌とは言えんじゃろ」


 この神様、性格悪いな。


「じゃあ、それで。お願いします」

「がんばってのー」

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