「寿司屋台問題」

 ニューロマンサーという小説がある。冒頭、未来の日本から始まる(その名も「千葉市憂愁チバ・シティ・ブルース」)のだが、ここで描かれている日本はどう考えても日本じゃない。

 まず、千葉市チバ・シティにある通りには寿し、

 どう見ても中国だろ、とツッコミを入れたくなってしまうこのカンチガイ日本観(ウィリアム・ギブスンは中国人に聞いたイメージからこの退廃的サイバーパンク世界を作り上げた。私はこの作品のSF的価値に関しては評価したい)。実は寿司の屋台は昭和初期ごろまではあったらしい、という話はとりあえず置いておいて、現代日本人の感覚的に寿司が屋台で売られていないことはすぐに分かる。

 もちろん、書いたのが日本人ではないのだから仕方ないだろう。「寿司」も「屋台」もあるのに、「寿司の屋台」はない、なんてことは日本に住んだことがなければ分からないと思う。


 だが、実際この「寿司屋台問題」は作家につきまとう永遠のテーマな気もする。行ったことのない場所や経験したことのないことを想像で作り上げる以上、どうあがいていても「寿司の屋台」みたいなものをさせてしまうことは避けられないからだ。

 実際、私も中華街が出てくるファンタジー小説を多く手がけたが、その中には中国人に文化的に間違っていると指摘されたものもあった。


 今回はこの「寿司屋台問題」について見ていきたい。



 

 

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