女の子とろくに喋ったことないのにレンタル彼氏はじめました

@kinokogohan

第1話 レンタル彼氏登録しました

中学、高校と花のない学生生活を送ってきた。中学は共学だったものの、女子と話した回数なんて両手に収まるほど回数だ。しかも、それは「このノート先生から返しとくようにって」、「次の授業の準備手伝って」などの単なる業務連絡に過ぎなかった。

私的な会話なんて一切なかった。

そんな薔薇色には程遠い中学生活を終えた僕は、何を思ったのか男子高校に進学した。我ながら馬鹿だと思う。

女子と会話したかったのに、遊びたかったのに、そんなチャンスを限りなく少なくする男子高校に進学したのだ。ただ、その男子校は幸いにも偏差値が高く、親からは受験に合格した際、大々的に家族パーティを行って祝ってもらった。それだけは少し嬉しかった。


しかし、男子高では思った通り、出会いなどなかった。オタク世間では馴染み深い、男の娘といわれるような、かわいらしい男性もいなかった。結局、男臭い学生生活を3年間送る羽目になった。ただ、クラスメイト自体には恵まれて、女の子がいない以外は非常に有意義な学生生活だった。ちなみに、クラスメイトは誰一人童貞を卒業することなく、高校を卒業したらしい。



さて、そんな僕は今パソコンでとある画面を開いていた。

「レンタル彼氏会員登録」と太い文字で映った画面だ。


僕としては、高校をついこの前卒業して、大学入学を控える今、このまま大学に行っても多分女の子と話す機会なんてないと考えていた。そのとき、ふとネットを見ていると映った出会い系サイトの広告が目についた。だが、出会い系サイトに登録する気は起きなかった。女の子に話しかけるのが苦手で中学を卒業してから3年も会話していない僕が、自分から攻めるなんて無理に決まっている。


どうしたものかとため息をついたとき、さらにバナー広告が表示された。

「レンタル彼氏やってみませんか?」

それが目につき、広告を表示し、どのようなものなのかひとしきり見て、今に至る。


名前は偽名を使っても大丈夫だが、顔写真を掲載しなければならない。顔写真掲載が最もリスクが高いのか、顔の一部を隠したり、はたまた顔全部をぼかした画像を掲載している人も多くいた。

本当なら僕も顔を多少隠すべきだったかもしれない。

ただ、只今の時刻は26時を過ぎたところ。

深夜テンションというものに陥っていたのだろうか。


あろうことか、レンタル彼氏サービスに同意し、顔写真は隠すことなく掲載してしまった。極めつけは代金だ。女の子と一緒の時間を過ごしたいがために登録したのであって、別に、お金は僕にとってさほど重要なことでは無い。


中には結構な額で、レンタル彼氏をやっている人もいたのだが、僕の顔、その他もろもろのスペックで高額な料金設定にする気は起きなかった。

料金設定はレンタル彼氏側が選べるとのことであり、僕は1時間1500円という、選択できるなかでの最安値で設定した。

レンタル彼氏は稼げます!といった内容がこの広告には書かれていたが、仮にレンタル彼氏の依頼が入っても、僕はアルバイトをするのと同じような額しか手に入らないだろう。稼げるのは一部のハイレベルなレンタル彼氏だけだと思う。


だが、それでもいい。誰か一人でもいいから僕を指名してくれないだろうか。少しくらい薔薇色の学生生活に似た何かを手に入れさせてくれないだろうか。

レンタル彼氏側が、レンタルしてくれる女の子側に向かってそんな願いをするのは変なことかもしれない。

だが、そんな淡い期待を持ちながら、登録を完了させる。

少し胸がドキドキしていたが、眠気に負けてしまったのか、瞼が重くなったので寝床についた。

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