二話「人ならざる存在」
…俺が…神だ?何を言っているんだ。吞乃の言葉を咀嚼できない。色々と不可解が過ぎる。
「まあ、そうなるのも可笑しくないわな。だが、お前自身も自分が何者かわかってなかったんだ。だからお前の『正体』を与えたんだ。」
クツクツと笑いながら近くの岩に腰掛ようとする吞乃が話す吞乃の言葉を聞いてもやはり理解できない。
「つまり俺が最初から『薬師童子』であったというのか?」
「いや、その可能性は低いだろうな。ただ、お前のことを知っている者がお前も含めて誰もいなかった、だから新しい存在にしてやったのさ。」
そんな事が可能なのか?確かにこの世界における過去の自分の存在の証明はできないが。
「私たちはその存在を『存在していると理解される』形で他に依存するんです。信仰とも言い換えれますね。そして先ほどの行為によってあなたは信仰を得ました、なのであなたは『薬師童子』になったのです。」
…なるほど、少しだけ理解できた。やっぱりこの人たちが人間ないことだけだがな!
「少しだけだが、腑に落ちたようだな。じゃあ、最後の確認だ、今のお前は私とほぼ同じことが出来るはずさ。自分が水と一体化するのをイメージしな、それで分かる。」
何をすれば良いというのだ、自分が水と一体化?分からない。取り敢えず言われた通りのことをする。自分が水に―
「―ッ!?」
急に景色が上へ昇っていった。いや、自分の視野が下がったのだろう。…なるほどこういう事か。
「これでよいのか?」
「上出来さね。じゃあ次はこれだな。」
吞乃が俺に触れる。さっきまであった体の柔性が嘘かのように、体の自由が奪われる、どうも凍ってしまったようだ。こういう事も出来るのか。体をもとに戻して、今度は体を変形するイメージで良いのか?―おお!できた。
「おぉ、見事な錐状の氷ですね。」
「はじめてにしては局所凍結をうまくやるねぇ。これが出来るといざって時に役に立つから練習しときな。」
右手を錐状にできたはいいもののこの世界において戦闘ってあるのか?コレ武器にもなるからもし戦闘があったとしても便利そうだな。ていうか「いざって時」って正にそうだよな。
「さて、今夜は満月、まあ我々の力が最も栄える日さね。そこら練り歩いて羽を伸ばしたいとこだがここは一つ、お前に拠点を紹介してやろうじゃないか。」
祠の中が拠点なのか。何はともあれやっと羽を伸ばせるって事か。喜ばしい限りだ―
―どういう事だよ、あの狭そうな祠の中に空が広がっているではないか。なんか人がいっぱいいるし。
「皆さん優しい方々ですよ。」
「ここは隠れ里、人ならざる存在の溜まり場さ。うちの管轄は基本的に河童だな、まあ他のもいるんだが。」
「因みに管轄と言いつつ殆ど放置状態ですけどね。」
「…そういう事は言わないでもらいたいんだが?」
…まあ神が居れば妖怪が居ても可笑しくないわな。にしてもあれは河童か?随分と人間らしい造形をしてるもんだ。もっと有名漫画家の描いた河童みたいなのを想像してたんだけどな。
「取り敢えず河童の長老に挨拶をしてこようか。色々と融通してもらえるようにな。」
お偉いさんへの挨拶が先となると羽を伸ばせるのはまだ少し遠そうだなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます